なぜインド旅はキツイのだろうか、順番待ちしないインド人
筆者の商社時代の3歳年下の後輩でいわばバックパッカーの元祖のような御仁がいる。彼は学生時代に2年間海外放浪、商社勤務中は6カ国に駐在、そして筆者同様60歳で引退後は年間10カ月以上国内外を放浪しているという心身ともに頑健な猛者だ。そんな猛者にとってもインドは気候や環境もキツイがなんといってもインド人そのものがキツイという。
例えば街で買い物をするときにインド人の買い物客が店頭に群がって我勝ちに店員に声を掛けている。いつまで経っても自分の順番が来ないというイライラ。列に並んで順番を待つという習慣がないので外国人も押しくら饅頭のカオスに参入しなければならない。
鉄道・バスの切符を購入するたびに覚悟する艱難辛苦
インドの長距離列車の予約切符を外国人が自力で購入するには覚悟が必要だ。ニューデリーでは外国人専用カウンターがあり、エアコンが効いた部屋で順番待ちの札を持って電光掲示板の案内を待てばよいので先進国と変わらない。
ところがこれは例外中の例外である。ムンバイ中央駅ですらも外国人専用カウンターは名前だけだ。どこの駅でも窓口に群がるローカルの人々を押し分けて辛抱強く最短でも小一時間待つことになる。1人で家族全員の切符を買う人や数十人分の予約をする旅行代理店の人間が混じっているので恐ろしく時間がかかる。また突然休憩と称して窓口が閉まる。
さらに切符の発行には係員が列車番号、乗車駅、降車駅、身分証明書の氏名、年齢、連絡先など必要事項を詳細にパソコンに入力する。希望した列車のクラスが満席だと延々と代替の日時やクラスを探すことになる。気の遠くなるような非効率な事務作業である。
長距離バスも正規料金で切符を入手する場合にはバスターミナルの運営会社の窓口で列車とほぼ同様の艱難辛苦を甘受せねばならない。
切符販売窓口での難行苦行を避けるために外国人観光客は代理店を利用することが多い。しかし代理店もまた別の意味でインド的なのである。委細は後編にて。
次回『後編』に続く
