2025年7月17日(木)

Wedge REPORT

2025年1月27日

 一方、スポットワークを巡るトラブルが散見されていることも見逃せない。クラウドサービスを開発・運営するKiteRa社(東京都港区)の24年4月調査では、スポットワーク経験のある20代以上の男女348人のうち、51.4%が勤務先で何かしらのトラブルに遭遇したと回答した。「仕事内容が事前に聞いていた内容と異なる」「労働条件(労働時間や給与など)が異なる」の2つは多く上がったトラブル事例だ。

 24年11月には、タイミー上に不適切な疑いのある求人が募集される事案が発生し、SNS上で「闇バイトでは?」と安全性に対して問題視する声が上がった。これに対して24年12月にタイミーは、24時間365日、求人原稿を掲載前に目視と機械的な仕組みを組み合わせて全件チェックする体制を構築するなど、不正利用防止のための対策を発表した。

 対策に効果はあるのか。同社社長室の渡辺尚人氏は「11月末から新たな体制での取り組みを始め、1月6日時点で不適切な疑いのある求人の掲載は見られない。引き続き、安全対策を強化し、悪用されない徹底した仕組みをつくっていく」と話す。

 散見されるトラブルについて専門家はどう見ているのか。弁護士の中野雅之氏はこう話す。

 「スポットワークはユーザーと事業者が直接雇用契約を結ぶ形となる。雇用主である事業者は、労働者の安全に配慮する義務があり、労働関連の法令を遵守しなければならない。ユーザーは不慣れな職場で作業することも多いので、労働災害を発生させないよう安全教育を行うなど予防措置を講じる必要がある。だが、中にはこうした対応を疎かにする事業者もみられる」

 簡単に人を集められ、1回限りの関係性も可能という手軽さを逆手に取り、労働者を〝使い捨てる〟意識の事業者もあるようだ。こうした事業者の排除については、業界全体として本腰を入れて取り組むべきだ。

人材確保に有効
長期雇用を目指す動きも

 実際の現場で、スポットワークはどう活用されているのか。お酒の種類の豊富さに定評のある川崎市内の某飲食店の店長によると、21年から週1~2回、継続的に利用するほど、「人手不足解消に有用なツールになっている」と話しこう続ける。

 「主に学生バイトや副業目的で、19歳から50代までの方が働きに来る。飲食店経験者限定で募集していることもあるが、ほとんどの人が想定通りに働いてくれた。ドタキャンされることもあったが、大きなトラブルはなかった。ただ、スポットワークで働く人に、料理に合うお酒の提案など〝高度な接客〟を任せることは難しく、本来なら既存のスタッフで回せるのがベストだと考えている」

 長期的に人を雇いたいと考えるのは、飲食店だけではない。物流大手の西濃運輸はトラックドライバーの採用手段の一つとしてタイミーを活用している。タイミー経由でドライバー補助の仕事を経験してもらった後、良ければ正式な求人への応募につなげる狙いだ。タイミーを通じて入社し、トラックドライバーとして活躍する清水大盟(ひろあき)さんは「事前に職場の雰囲気がつかめたのがよかった」と話してくれた。

 こうした動きは、医療業界にも広がり始めている。子育てや親の介護のために一度離職した後、復職を望むも医療現場に戻れていない「潜在看護師」が約80万人いるとされる。


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