イスラエル軍のレバノン侵攻で強制退去させられたイスラエル人夫婦
11月26日。コーラムのホステルで30歳前後のイスラエルの夫婦と知り合った。彼らはレバノン南部国境近くのいわゆる入植地の町に住んでいた。ヒスボラとの戦いが停戦しない限り、住居に戻れないという。ヒスボラ制圧のためイスラエル軍が国境地帯の住民に退避命令を出したので20万人のイスラエル市民が強制退去させられた。停戦が成立しても住居だけでなくインフラも破壊されているので元の生活に戻るまで時間を要するであろうと悲観した。
イスラエル政府はホテルや空いているビルを仮設住居として用意したが不足しており、夫婦は貯金を下ろして難を逃れるために1年くらいの予定で海外旅行しており、インドの次は東南アジア、そして桜の季節に日本に行く計画だ。
ユダヤ人の苦境や被害をスルーしている西側メディアは偏向報道
夫妻が不満を露わにしたのが西側メディアの姿勢だ。レバノンから越境してきたヒスボラにより、ユダヤ人の子供十数人が殺害されたが報道されない。またハマスはユダヤ人の人質の安否情報を意図的に公表せず、イスラエル市民の不安を煽り立てて人質家族や友人知人らによる反政府運動拡大を画策している。
イスラエル総人口のうちパレスチナ人(アラブ系)は数百万人いるが、一部はハマスと連携してイスラエル国内でテロ事件を起こしている。先月も列車内でユダヤ系市民7人が殺害された。しかし西側メディアは無視している。
≪参考≫ネット情報では2022年時点でイスラエル国内のアラブ系市民は20%でありアラビア語が母語だが、ヘブライ語とのバイリンガルも多いという。80%がイスラム教徒、その他キリスト教徒、ドルーズ教徒など。兵役は免除されている。
ハマスはテロ集団でありハマスの洗脳教育が負の連鎖を生んでいる
夫妻は「イスラエルが過去ガザ地区のパレスチナ市民の福祉向上のため資金・物資・食糧を援助したが、ハマスは地下要塞建設や武器調達に流用した」とハマスへの不信感を口にした。そしてガザ侵攻作戦に参加した友人から「ガザの子供の通学カバンには『ユダヤ人を殺せ』というスローガンが貼られていた」と聞いたという。ハマスが行政支配しているガザでは、小学生にも憎しみの負の連鎖を生み出す洗脳教育をしていると非難した。
果たしてイスラエル国家は“安住の地”なのだろうか
上記のように国連の予測ではイスラエルは、今後も毎年数十万人のペースで人口増加する。イスラエル国内のユダヤ人・アラブ系市民ともに出生率が高いこと、欧州各国の右傾化など様々な政治的要因により、海外からの移住者も止まらないことが予測の根拠だ。愛国青年ロイ君の主張するように、イスラエルの領土拡大圧力は高まる。安住の地を求める在外ユダヤ人の移住が不幸なことにイスラエルを不安定にしてしまうのだ。
本稿前半『イスラエル人はなぜ、そんなにインドが好きなのか?』で紹介したコチのユダヤ人街の人々のように、世界各地に離散したユダヤ人は“安住の地”を求めイスラエルに移住した。しかし、皮肉なことにイスラエル建国から現在までの76年は戦争の歴史である。
今後“安住の地”を求めてイスラエルに移住するには“常在戦場”を覚悟する必要がある。イスラエル国民となることは“国民皆兵国防最優先国家”の市民として子供を戦場に送り出し、“終わりのない戦争”を戦い抜くことを意味する。
イスラエルの若者の生の声を聞いて、つくづくイスラエルとパレスチナ自治政府の平和的共存が限りなく困難であると感じた。8年前の2016年に北インドのマナリー郊外で出会った元衛生兵の23歳のイスラエル青年、ニール君の言葉を思い出した(『「Youは何しにインドへ」、インドで聞くイスラエル問題』ご参照)。
「イスラエルを平和国家として存続させるためには、在外ユダヤ人のイスラエルへの移住を大幅に制限するべきだ。代わりに米国がイスラエルへの移住希望者を受け入れるべきだ。米国ではユダヤ人社会は強力な政治力を持っており、イスラエルに移住するよりも幸せに暮らせる」
イスラエルとユダヤ人の大いなる庇護者を自認するトランプ大統領はこのニール君の大胆な提案をどのように思うであろうか。
以上 次回に続く