2025年4月18日(金)

冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2025年2月9日

「安倍-トランプ」関係の継承

 会談の成果だが、何よりも第1次トランプ政権時代に当時の安倍晋三首相が、トランプ氏と確認した日米関係の基軸は不変であったという確認ができた。これは非常に大きな成果であると思われる。

 トランプ氏は「安倍氏が石破氏を賞賛していた」と発言、また石破氏は安倍昭恵氏を経由してトランプ氏から渡された写真集への謝辞を丁重に述べていた。お互いに歯の浮くような美辞麗句にも見えるが、こうしたやり取りは、外交の場では決して儀礼だけとは言えない。

 安倍氏がトランプ氏と構築した関係を、そのまま石破氏は継承した、一連の外交儀礼の交換には、そのような重たい意味がある。つまり、自由なインド太平洋という概念を、石破氏へと相手が代わっても、トランプ氏は基軸とするという確認ができたということだ。さらにトランプ氏からは米国は日本の安全保障に完全にコミットをするという発言もあった。これは今回の会談の大きな成果といえる。

USスチールへ「投資」で前進

 首脳会談の結果、日鉄のUSスチールへの「投資」が承認されたというのも大きな成果だ。これは会談の途中から場外にリークがあり、まずロイターが速報していた。その上で、共同会見でも両首脳の口から説明があった。トランプ氏は、一部、日鉄のことを「ニッサン」と言い間違っていたが、それはともかく、日鉄のことを評価して、買収ではなく投資として承認するとしていた。

 この問題であるが、一部の日本の報道では依然として買収が認められなかったという解釈があるようだが、トランプ氏の言い方ではこれは単なる「言い換え」であると理解できる。つまり日鉄はUSスチールの経営権を手に入れ、同時に巨額の投資を行ってUSスチールの競争力を高めるが、言い方として「買収」ではなく大統領自身が「これは投資」だという、それだけのことだ。日鉄が投資後も少数株主に留まり、経営権を与えられないという話にスケールダウンさせるという話は全くなかった。

 この点に関しては、速報したロイターをはじめ、各メディアがそのように説明している。多くの場合がそうだが、これはトランプ氏のその場における判断であり、また石破氏の交渉が成功したということかもしれない。けれども、専門家による契約書の検討などは事後になる話であるので、日本側が「買収却下」という誤解をしていては、まとまる話も崩れてしまう。改めて確認するが、トランプ氏は明確に「買収」ではなく「投資」と認識する、つまり売買契約を変更するのではなく認識の上で言い換えをするという説明をしていた。


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