「日本ターゲット」の関税はほぼなし
もう一つ、具体的な話題として出てきたのが関税の問題である。日本に対するアメリカの貿易赤字を解消するためとして、日本に対する関税を導入するということは、トランプ氏は確かに言明した。ただ、これも石破氏の交渉が失敗したということではない。
トランプ氏は2点の指摘をしていた。まず、この追加関税は日本だけでなく、世界各国一律のルールとするとして来週前半に発表するとしていた。
この点は、米国内では比較的大きく報じられており、「中国、カナダ、メキシコ」に次いで全世界一律の追加課税となれば、世界経済への影響は不可避だとして、株式市場に影響を与えたほどである。一方でトランプ氏は、日本の場合は関税は相互的、また互恵的とするとしていた。これは、石破氏がデジタル赤字への課税などを提示し、これをトランプ氏がある程度受け入れた可能性がある。
さらに、日本がアラスカの液化天然ガス(LNG)を購入すれば、その分だけ貿易赤字の圧縮になるということも認めている。アラスカに関しては、日米合弁での開発の可能性も示唆していた。ということで、通商と関税の問題についても、日本がターゲットになることはほぼ回避された。
つまり、今回の首脳会談では、軍事外交における緊密な関係の再確認がされ、日鉄のUSスチール買収が言葉の言い換えだけで承認がされ、さらには通商と関税の問題では日本が具体的なターゲットとなることは回避されたといえる。石破氏としては、満額回答に近いと言えるのではないか。
日米関係は安定か
アメリカの各メディアは、確かに質疑応答では日本に関係のない、アメリカの国内問題ばかりを質問していた。けれども、それは日米間に懸案の存在しないことを証明した格好となっている。また、共同会見の動画や写真は、ちゃんと報道されており、石破氏の紹介もされていた。
日鉄の問題、世界一律の新関税の可能性については、かなり詳しく報じられている。そうした中で、アメリカの記者達、そしてニュース通の世論の間には、トランプ政権発足以来の激動の中で、日米関係が安定していることは珍しい安心材料になっているようだ。
エンディングでは、石破氏が放ったジョークをトランプ氏が受けて見せ、場内は笑い声と共に、和やかなムードでお開きとなっていた。日本側として成功であっただけでなく、共同会見全体としても成功であったと言える。そう考えると、アメリカにおける報道においては、決して「日本パッシング(無視)」は起きていないと言えるだろう。