しかし、全国どこも同じように民泊が普及しているわけではない。地域別の届出住宅数をみると、民泊は特定の地域に偏っていることがわかる。図1はその様子を描いている。
この図では濃い青色の都道府県ほど民泊数が多いことを表している。これをみると、基本的には東京、大阪、名古屋といった大都市や北海道、京都、沖縄といった観光地に民泊が多い。その中でも、東京にとびぬけて多くの民泊があり、その数は1万件を超える。次に多いのが北海道の2704件であるので、東京が際立って多いことがわかる。
さらに詳しく見ると、東京の中でも偏りがある。図2は東京23区別の民泊数を示している。
これをみると、大きな繁華街や観光地を抱える区に多くの民泊があることがわかる。東京の中で届出住宅数が一番多いのが新宿区で2689件、次が墨田区の1406件、続いて豊島区の1313件、渋谷区の963件となっている。総務省の令和5年(24年)住宅・土地統計調査によると、新宿区の住宅総数が26万1030戸であるので、その約1%が民泊なのである。
100戸のうち1戸が民泊というのはさほど多くないようにも思えるが、新宿区の町丁目数が135であることに鑑みると、平均して各町丁目それぞれに約20戸の民泊があることになる。ここからさらに民泊が増えていくと、地域社会にも無視できない影響を及ぼしそうである。
地域社会への影響
スペインのバルセロナ自治大学のガルシアロペス教授らの研究は、この点で参考になる結果を得ている。
その研究では、バルセロナ市の詳細な家賃・住宅価格のデータを用いて、Airbnbが地域の住宅市場の及ぼす影響を分析した。15年にはバルセロナの総住宅戸数のうち2%がAirbnbの物件で、賃貸に限ると6.8%に達していた。比較として挙げられていたニューヨークの総住宅戸数に占めるAirbnb物件の割合が1.3%、ロサンゼルスが0.86%、パリが2.5%であったため、バルセロナのAirbnb割合は当時の世界の観光都市の中では高い水準であった。
現在の新宿区の様子は、当時のロサンゼルスとニューヨークの間の状態と考えられる。教授らは15年4月から18年2月の間にAirbnbのウェブサイトに載った物件情報を収集した。


