バルセロナ市に233あるBasic Statistical Areaを地域の単位(それぞれの地域に約7100人が居住するくらいの地域単位)として分析し、それぞれの地域に50戸Airbnbの物件がある(正確にはAirbnbのウェブサイトに掲載されている)と家賃が1.75%、住宅取引価格が4.25%高くなるという結果を得た。新宿とバルセロナでは多くの違いがあるため、単純にこの結果を当てはめることはできないが、今後民泊がさらに増えていくと、家賃や住宅価格を大きく引き上げる要因になりそうである。また、その裏では付随して地域社会に様々な影響が表れる可能性もある。
価格の変化だけみても、地域住民の置かれた状況によって様々な意味を持つ。例えば、持ち家に住む人にとっては資産価値の上昇になるかもしれないが、賃貸住宅に住む人にとっては生活のための費用上昇になってしまう。結果として、民泊に興味のない人の転出を招いてしまうかもしれない。
また、民泊の増加は、そこに滞在する観光客の増加につながるため、飲食店などのサービスを提供する事業者には恩恵をもたらすが、地元住民がそのサービスを利用しにくくなる可能性もある。滞在する観光客へ地域社会のルール周知が十分でないと、民泊の利用が周辺住民に迷惑をかける可能性も否定できない。実際、2025年1月6日付朝日新聞デジタルでは民泊が住宅街の秩序を乱していると感じる地元の住民との軋轢を報じている(2025年1月25日最終確認)。
求められる外部性への対応
こうした各種影響の中で、地域住民や行政が特に注意すべきものは、民泊の利用が周辺住宅街の秩序を乱すというものであろう。民泊の利用者からすると、旅行を楽しんでいるだけかもしれないが、その振る舞いが意図せず周辺の地域住民の迷惑になってしまっている。
意図せず他者に与える影響のことを外部性と呼ぶが、その影響が良くないものである場合、その影響の元となる事象が社会にとって過剰になることが分かっている。ここの議論にあてはめると、民泊が社会にとって多くなりすぎてしまうのである。
このような場合、対策はいくつか考えられる。まずは民泊そのものを規制してしまい、一定以上に民泊が増えないようにするという方法が考えられるが、これはそもそも民泊を推進するという基本姿勢から難しいかもしれないし、経済活動を止めることにもなる。現実的には、民泊の事業主に対して、周辺地域への悪影響の防止をより強く求めたり、民泊が可能な用途地域を変更したりして、外部性の影響を最小限にするという方法が現実的であろう。
地域住民の反発を買うような民泊は本末転倒であり、住民の意見を十分取り入れ、民泊が地域社会と共存できるような方法を、行政も民泊事業者も探っていかなければならない。

