学校給食法第二条にある給食の目標では「適切な栄養の摂取による健康の保持増進を図ること」が掲げられている。京都市の小学校の給食費は月額4700円で、給食を食べる児童の保護者と教職員が払っている。1カ月20日とすれば1食当たり235円。食材価格が高騰する中、児童の健康維持のために栄養バランスや量を考えて献立を考えるのは至難の業だが、事前に食材が取り分けられた日の給食は本来児童が食べるはずだった量が減らされたわけで、必要な栄養がとれなかった可能性がある。
また、まかない料理で食中毒が起こった場合、給食で食中毒が起きていなくても、原因調査や感染拡大防止のため給食の調理施設の稼働が停止となる。そうなれば児童への給食の提供ができなくなるだけに、2年以上にわたってまかない料理の提供を受けた教職員の認識不足も否めない。
余ったご飯、寄付できないの?
ただ、食べ切れなかった給食、とくにご飯が残っていた場合、「まだ食べられるのに、捨てるのはもったいない」と思う気持ちは理解できる。市教委によると、給食のご飯は当日の欠席者数に合わせて対応しているが、それでも日によっては余ることがあるという。京都市の場合、給食で出た調理くずや残った食材は業者が回収して飼料化しており、ゴミとして廃棄しているわけではないが、ご飯はご飯として食べてほしいということだろう。
手つかずのご飯なら、例えば子供食堂やフードバンクへ寄付ができないものだろうか。素人考えでそう思ったが、これらの施設でも食品ならなんでも受け入れるわけではなく、安全性や保存性の観点から一定の基準を設けている。炊く前のお米であれば受け入れも可能だが、炊いたご飯は時間がたつと細菌が繁殖しやすく、食品衛生上のリスクを考えれば受け入れは難しい。
冷凍保存なら安全保てるが…
廃棄予定の給食をめぐっては、名古屋市の小学校で22年、冷凍保存されていたパン2個と油揚げ2袋を自宅で食べるために持ち帰ろうとしたとして、50代の女性調理員が懲戒免職となったことがある。この処分を不服として調理員が訴訟を提起し、24年7月に懲戒免職処分を取り消す判決が出たことで免職処分は取り消された。調理員が持ち帰ろうとした食品は、食中毒などが発生した際の検査用として保存されていたもので、近く廃棄予定だったという。
冷凍保存されていたパンと油揚げは、多少味は落ちているかもしれないが、安全に食べられるものだ。廃棄予定とはいえ、給食の食品を無断で持ち出すのはダメだが、廃棄処分が妥当なのかは検討してもいいのではないか。
