2025年12月6日(土)

「最後の暗黒大陸」物流の〝今〟

2025年3月5日

労働時間は短縮されたのか

 2024年4月から労働基準法と改善基準告示の改正が施行されたが、ドライバーの労働時間はどう変化したのか。結論を先に述べれば、2024年12月現在、大手企業では以前から労働時間の削減が進んでいたが、中小企業では大きな変化は見られない。道路貨物運送業全体としては、2024年を境に労働時間が大幅に短縮されたわけではない。

 実労働時間数を企業規模別に見ると、従業員数1000人以上の大企業では、2018年ごろから労働時間の短縮が始まった(図表2-2)。新型コロナによる景気悪化もあると思われるが、2021年まで労働時間は短縮を続け、その後わずかに戻るものの、2019年以前の水準と比較すると労働時間は明らかに短くなった。

 大企業で労働時間の短縮が始まった時期を簡単に振り返ってみたい。大手広告会社の電通に勤める若手女性社員が過労自殺したのが2015年の冬だった。それが2016年9月に労働災害として認定され、その年の暮れには同社幹部ら10人が労働基準法違反容疑で書類送検された。

 そして同年、宅配便大手のヤマト運輸が、「サービス残業」問題で労働基準監督署から是正勧告を受けた。同社の労働組合は、2017年春闘で荷物の総量抑制を求め、企業は受け入れた。その後、宅急便の料金が値上げされ、「ヤマト・ショック」と呼ばれた。

 この時期、国会では長時間労働を規制する議論が進み、2018年に「働き方改革」関連法が成立した。残業時間の上限規制は、トラックドライバーには5年間の猶予措置が与えられたが、大手物流企業では、間接部門を対象に2019年から適用が始まった。

 こうした流れのなかで、大企業では、2019年の法施行に備えてドライバーも含めて労働時間の短縮に乗り出したと考えられる。労働時間の内訳を見ると、大企業では、所定内労働時間が2018年から減少し始め、2022年から2023年には所定外労働時間も低下している。つまり、2019年に「働き方改革」関連法が施行されるにあたり、就業規則の見直しを図った可能性がある。

 残業時間は、そもそも業務の繁閑に合わせて増減するため、今後どう動くかは不透明だが、ここ数年は減少している。結果的に2014年から2023年までの10年間で実労働時間数は10%、所定内労働時間数は12%減少した。

 対して、産業平均(従業員5人以上規模)の実労働時間数は、緩やかに低下傾向にあるものの、大企業ほど明白な短縮は確認できず、過去10年間で4%減にとどまる。かつこの削減は、所定外労働時間が短縮したことの寄与度が高く、所定内労働時間はほぼ変わりない。そしてデータに限りがあるが、2024年4月以降の動きも触れておきたい。2024年4月から11 月までの実労働時間数の平均は195時間であり、前年同月の199時間と比べると短縮された。だが2022年の年平均は195.7時間であり、2024年4月を境に産業全体で労働時間が顕著に短縮されたとは言い難い。

(bee32/gettyimages)

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