2025年12月6日(土)

特集:食料危機の正体

2025年9月15日

高騰する野菜の市場価格にはコスト上昇分が転嫁されていない。「篤農家」として知られる澤浦彰治さんが問題提起する。「Wedge」2025年3月号に掲載されている「食料危機の正体 日本の農業はもっと強くできる」記事の内容を一部、限定公開いたします。

 野菜の価格高騰が止まらない。農林水産省「食品価格動向調査(2025年1月13日の週)」によると、キャベツ337%、白菜250%、レタス174%など、平年比の市場価格(全国平均)は調査対象の8品目全てで上昇している。この背景について、レタスなどの露地野菜を栽培するグリンリーフグループ(群馬県昭和村)社長の澤浦彰治さん(60歳)はこう解説する。

群馬県昭和村で高原野菜を栽培する澤浦彰治さん(WEDGE)

 「農産物価格は需給のバランスで形成されています。1月に出荷されたキャベツなどの野菜は9~10月に植え付けたものですが、猛暑と台風で全滅した産地も多い。供給のひっ迫により価格が高騰しているというのが現状です」

 しかし、必ずしも野菜農家が莫大な利益を得ているわけではない。

 「寒さで野菜が思うように育たず、当社の歩留まりは6割ほどです。また、ここ数年で肥料価格や人件費が高騰していますが、農産物の市場価格にはその分の転嫁はなされていません」

 昨年に見直された食料・農業・農村基本法には農産物の「適正な価格形成」が盛り込まれた。「自分たちで価格が決められる農業経営」を志向してきた澤浦さんは「国が理念として打ち出すのは素晴らしいこと」と前置きしたうえで、次のように話す。


新着記事

»もっと見る