
アメリカのドナルド・トランプ大統領は15日、米軍がイエメンの反政府武装組織フーシ派の拠点に対し、「決定的かつ強力」な空爆を行ったと発表した。フーシ派が紅海で船舶などに攻撃を仕掛けていることへの措置だとしている。フーシ派は、空爆によって多数の死傷者が出ているとしている。
フーシ派の保健当局のアニス・アル・アスバヒ報道官は16日、米軍の空爆で「子供5人と女性2人」を含む53人が死亡し、98人が負傷したとソーシャルメディアに投稿した。
トランプ氏は、「イランから資金提供を受けているフーシ派は、米軍機に向けてミサイルを発射し、我々の部隊と同盟国を標的にしている」とソーシャルメディアに投稿。フーシ派の「海賊行為、暴力行為、テロ」によって「数十億ドル」が失われ、人命が危機にさらされていると付け加えた。
フーシ派は、イスラエルがパレスチナ・ガザ地区の封鎖を解除するまで、紅海を航行する船舶を標的にし続けるとしている。イスラエルと戦闘を続けるイスラム組織ハマスは、フーシ派と同様にイランの支援を受けている。
2023年11月以降、フーシ派は紅海とアデン湾で、数十隻の商業船舶に対し、ミサイルやドローン(無人機)、小型ボートを使った攻撃を仕掛けている。これまでに2隻を沈め、3隻を拿捕(だほ)し、乗組員4人を殺害している。
フーシ派は16日夕、イエメンの首都サヌアと、フーシ派の拠点になっているサウジアラビア国境近くの北部サアダで、複数の爆発があったと発表した。
米ホワイトハウスは、今回の空爆による死者にはフーシ派の主要な人物が数人含まれているとしている。フーシ派側はこれを認めていない。
フーシ派の指導者アブドル・マリク・アル・フーシ氏は、アメリカがイエメン国内の拠点への攻撃を続ける限り、紅海を航行するアメリカの船舶を標的にしていくと述べた。
「フーシ派指導者を排除」
マイク・ウォルツ米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は米ABCニュースに対し、15日の空爆で「複数のフーシ派指導者を標的にし、排除した」と語った。
米FOXニュースに対しては、「我々は圧倒的な力で彼らを攻撃し、イランに『もう十分だ』と警告した」のだと述べた。
ピート・ヘグセス米国防長官は、フーシ派の攻撃がやむまで「容赦ない」ミサイル作戦を行うと誓った。
「明確にしておきたいのは、この作戦は、航行の自由と抑止力の回復のためだということだ」と、ヘグセス氏はFOXビジネスのテレビ・インタビューで語った。
トランプ氏は空爆の実施を発表した際、「目的を達成するまで圧倒的な殺傷力を行使する」とした。
また、フーシ派に対し、船舶への攻撃をやめなければ「これまでに見たことのないような地獄の雨が降り注ぐだろう」と強調した。
一方でフーシ派は、今回の空爆によってガザのパレスチナ人への支持が弱まることはないとしている。
イランのアッバス・アラグチ外相は、米政府には「イランの外交政策を指図する権限も権利もない」と述べた。
アラグチ氏は16日、「イスラエルによるジェノサイド(集団虐殺)とテロへの支持をやめよ」、「イエメンの人々を殺害するのをやめよ」とソーシャルメディアに投稿した。
フーシ派の軍事部門の報道官は16日、同組織が紅海上で、米空母「ハリー・S・トルーマン」や複数の軍艦に対し、弾道ミサイルとドローンによる攻撃を仕掛けたと述べた。証拠は示さなかった。
米政府関係者はロイター通信に対し、米軍機が16日にフーシ派のドローン11機を撃墜したと明かし、いずれのドローンも「ハリー・S・トルーマン」には接近しなかったとした。
こうしたなか、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は16日、イエメンでの「最大限の自制と、すべての軍事活動の停止」を求めた。
(英語記事 Fifty-three killed in US strikes on Yemen, Houthis say/US launches wave of air strikes on Yemen's Houthis)