このような感情は、元々米中の間でバランスをとり、マレーシアと同様BRICS加盟を申請したタイや、その他の東南アジア諸国に既に共有されているのではなかろうか。本来は東南アジア諸国連合(ASEAN)の一体性を守る立場にあるASEANの盟主インドネシアは、一旦はBRICSの誘いを断ったにもかかわらず、今回は、マレーシア、タイをたしなめるどころか、自分からさっさとBRICSに入ってしまった。
この背景にあるのは、彼らなりのヘッジ対応だろう。米国が居ないということは、経済面では貿易・投資共にほとんどの国で中国が支配的位置にいる中で、そのままでは中国に完全に席巻されてしまう。それよりは、ロシアもインドもメンバーであるBRICSに入った方が頼る先を多様化できるということだろう。
さらに、イスラムとのつながりのあるマレーシアやインドネシアは、資金調達先としての役割を中心にして、中東諸国との関係を強化している。また、同じく米中の間でいわゆる「バンブー外交(竹のように柔軟に振れる)」を行ってきたベトナムは、安全保障上当然中国べったりという訳にはいかないので、今後益々ロシアに接近するのではないだろうか。
日本が動く好機が来ている
さらに、米国の真空を埋め中国とバランスをとる上で、日本に対しても熱いまなざしが向けられていることを十分認識すべきである。日本が積極的に具体的な地域へ関与する姿勢を示すべき好機が訪れている。
フィリピンはベトナムと同様、中国に頼る選択肢は無いので、米国が同国を守らないとすれば、日本が一定の努力をする必要が出てくる。現在フィリピンが進めている東南アジアの沿岸警備隊間の連携強化の支援や、中国との間の紛争を再び国際調停に持ち込むことへの協力など、日本でもできる事はあるはずだ。
なお、以上を踏まえれば、中国を共通の敵とするアジア版NATOはそもそも出来ないし、仮に作れたとしても上記の論説が言う程幅広い国が参加する可能性はなく、機能しないだろう。
