2025年12月6日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年3月31日

 クレムリンは、「ウクライナ問題」は米露二国間で処理すべきと述べ、将来の最終合意のための交渉からキーウを排除したいと考えていることを示した。トランプ氏がこれを受け入れるかどうかは不明である。

 ロシア側の声明はまた、米国の援助によって支援されてきたウクライナ軍の強制動員と再武装の終了を求めた。ウ露のいずれも兵役年齢の男性の徴兵を拡大している。

 トランプがクレムリンとの和平協定を模索していることから、同氏がウクライナの広大な地域をモスクワに明け渡し、ウクライナの防衛を弱体化させることに同意するのではないかという懸念が生じている。

 17日、露外相は、いかなる和平協定もウクライナの中立的地位を保証するものでなければならず、またウクライナ領土に欧州の平和維持軍を派遣してはならないとしているが、これは、キーウと西側同盟諸国が和平協定に求める重要条件だ。

*   *   *

仲介者がトランプという問題

 ウクライナ戦争にかかる停戦に向けた動きは日々刻々と変化しており、かつ非常に複雑である。トランプによる停戦交渉の仲介はすでに綻びが生じており前途多難と言わなければならないが、その最大の理由の一つとして、トランプによる仲介が以下のような本質的な問題を抱えていることが指摘できる。

 第一は、そもそもトランプという仲介者の公平性の問題である。これまでの同大統領の言動を見る限り、ロシアの立場を優先し、停戦等に関するプーチンの考え方を軸に調整しようとする姿勢が明らかである。ゼレンスキーはこれに可能な限り抗いながらも、トランプからは武器供与や諜報データの共有停止をちらつかせられて、ある程度の譲歩を余儀なくされた状態にある。

 また、トランプはとにかく「停戦合意」という形を作ることを優先しており、彼のロシア寄りの姿勢と相俟って、トランプとの関係におけるプーチンの立場を有利にさせる可能性を与えている。

 第二は、戦争の当事者同士による直接の接触がなく、米国が両当事者と個別に調整するスタイルをとっていることである。

 このスタイルの問題は、一方の当事者が他方の当事者と仲介者との間でどのような合意がなされているかにつき伝言でしか知ることができないことだ。これは当時者間における誤解、および仲介者に対する猜疑心を招きやすい。


新着記事

»もっと見る