2025年4月13日(日)

BBC News

2025年4月7日

米ワシントンで星条旗や抗議のメッセージを掲げる人々。背後には米連邦議会議事堂がみえる

アメリカ各地で5日、ドナルド・トランプ大統領に対する抗議デモが行われた。イギリス・ロンドンやフランス・パリなどでも抗議者が集まり、トランプ氏の2期目就任後、最大規模の抗議デモとなった。

トランプ氏に対する「Hands Off(手出しするな)」抗議の主催者は、全米50州を含む計1200カ所での集会開催を目指した。ボストンやシカゴ、ロサンゼルス、ニューヨーク、ワシントンなどでは数十万人が集まった。

抗議者たちは社会問題から経済問題まで、トランプ氏のアジェンダ(政策課題)に対する不満を挙げた。

イギリス・ロンドンやフランス・パリ、ドイツ・ベルリンなど、世界各地でもトランプ氏に対する抗議デモが開催された。トランプ氏は2日、世界のほぼ全ての国や地域に輸入関税を課すと発表し、反発を呼んでいる。

トランプ政権は、米各地の大学キャンパスで昨年、学生らが敷地を占拠し、パレスチナ・ガザでの戦争に抗議したことをめぐり、抗議に参加した留学生の査証(ビザ)を取り消すなどしている

5日のマサチューセッツ州ボストンでの抗議デモは、アメリカの大学に通う学生に対する入管当局の強制捜査がきっかけになっていると、一部の参加者は語った。

ボストン郊外では先月25日、タフツ大学の博士課程のトルコ人学生ルメイサ・オズトゥルクさん(30)が入国管理当局によって拘束された。

覆面をした私服の当局者らによってオズトゥルクさんが連行される場面の動画は広く拡散され、インターネットで抗議の声が噴出した。

法学部の学生ケイティ・スミスさんはBBCニュースに対し、オズトゥルクさんの件が自分の動機になっていると話した。

「今日立ち上がることができるし、後で連行される可能性もある」とし、「私は普段、デモに参加するような女性ではありません」と付け加えた。

ロンドンでも

英ロンドンでは、抗議者たちが「ふざけるな、アメリカ」、「人を傷つけるのをやめろ」、「あいつはばかだ」といったサインを掲げた。

抗議者たちは「カナダに手を出すな」、「グリーンランドに手を出すな」「ウクライナに手を出すな」と連呼し、トランプ政権による米外交政策の変更に抗議した。トランプ氏はカナダがアメリカの51番目の州になるべきだなどと繰り返し発言しているほか、デンマーク自治領グリーンランドの所有に意欲を示している。また、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と公の場で対立したほか、ウクライナとロシアの和平交渉の仲介成功がなかなか果たせずにいる。

「億万長者が政府を乗っ取っている」

米ワシントンでは大勢の抗議者が集まり、民主党議員の演説に耳を傾けた。演説の多くは、裕福な献金者がトランプ政権で担う役割に焦点を当てた内容だった。なかでも富豪のイーロン・マスク氏は、トランプ氏の顧問を務め、連邦政府の支出と職員を大幅に削減するという取り組みを指揮している。

マクスウェル・フロスト下院議員(民主党、フロリダ州選出)は「億万長者が政府を乗っ取っている」と非難した。

「市民から奪えば、市民は立ち上がるものだ。投票箱を通じて、そして街頭で」と、同議員は叫んだ。

今回の抗議デモは、トランプ氏とその側近らにとって苦しい1週間が続いた中で起きた。フロリダ州の2選挙区で1日行われた連邦下院議会選の補欠選挙では、いずれも共和党候補が勝利した。ただし、民主党候補との差は共和党が期待していたよりも小さかった。

また、ウィスコンシン州で同日に行われた州最高裁判事の選挙では、リベラル派候補が、マスク氏が支持する保守派候補に10ポイント近い差をつけて勝利した。

民主党はどちらの州でも、トランプ政権の政策やマスク氏の影響力に対する有権者の怒りを利用しようとした。

一部の世論調査では、トランプ氏の支持率がやや低下していることが示されている。

先週公表された、ロイター通信と仏調査会社イプソスによる調査によると、トランプ氏の支持率は43%まで低下し、2期目就任後最も低い支持率となった。1月20日の就任時は47%だった。

また、トランプ氏の経済問題への対応を評価すると答えたアメリカ国民は37%、生活費対策を評価すると答えたのは30%だった。

ハーヴァード大学アメリカ政治研究センター(CAPS)とハリス世論調査による最新の調査では、登録有権者の49%がトランプ氏の職務遂行を評価すると回答。先月の52%から支持を下げた。一方で、有権者の54%が、トランプ氏がジョー・バイデン前大統領よりも良い仕事をしていると考えていることも示された。

ワシントンでの抗議に参加したテリーサと名乗る女性は、「私たちは民主的権利を失いつつある」のでここに来たとBBCに話した。「私は、連邦政府での削減の動きをとても懸念している」として、退職金や教育手当てについても心配していると付け加えた。

トランプ氏は抗議者のメッセージを受け取っていると思うかと尋ねると、「えーと、そうですね。(トランプ氏は)ほとんど毎日ゴルフをしている」と、女性は答えた。

トランプ氏は5日、公的行事を行わず、フロリダ州に所有するリゾートでゴルフをして過ごした。翌6日もゴルフを楽しんだ。

ホワイトハウス、民主党こそ脅威と反論

ホワイトハウスはトランプ氏の立場を擁護する声明を発表。トランプ氏は健康保険制度「メディケア」などのプログラムを守り続けるとし、脅威なのは民主党だと主張した。

「トランプ大統領の立場は明確だ。社会保障、メディケア、メディケイドを受給資格のある人々のために常に守っていく。一方で、民主党の姿勢は、社会保障やメディケア、メディケイドを不法在留外国人に与え、これらのプログラムを破綻させ、アメリカの高齢者を押しつぶすものだ」

トランプ政権の移民問題担当最高顧問の1人、トム・ホーマン国境問題担当長官のニューヨークの自宅前には、抗議者たちが集まった。ホーマン氏は5日、米FOXニュースに対し、自分は当時ワシントンにいたと語った。

「彼らは好きなだけ、誰もいない家に抗議していい」とホーマン氏は述べた。また、抗議者の存在が法執行機関をその場に 「縛り付け」、当局者がより重要な仕事をするのを妨げたと付け加えた。

そして、「抗議や集会には何の意味もない」と続けた。

「だから、憲法修正第1条が保障する(表現の自由)権利をどうぞ行使してください。それでこの事案の事実が変わるわけではない」

(英語記事 Anti-Trump protests held in cities across the US

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cp8jkgxp9d0o


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