「海図のない航海」も、消費者は冷静か
現在進行している事態はその全体が矛盾と言っても良い。「製造業回帰を叫びつつ、自分たちは製造業の受け皿にはなり得ない層」がある。一方で、政権を維持するには、その層の抱える「グローバル経済への怨念」に応えるような「勝利」の演出は絶対に必要とされる。けれども、行き過ぎた関税戦争は大不況の引き金となり、そうなれば、全員が不幸になり政権は失速する。
その意味で、進行している事態の全体は既に「海図のない航海」という領域に突っ込んでいるのであり、市場の乱高下はまさにその構図を反映しているとも言えるだろう。
ただ、現時点では消費者による輸入品のパニック買いは、それほど目立っていない。一部の欧州車が品薄になったり、トヨタの日本国内製の高級車の引き合いが増えているようだが、顕著な動きではない。スコッチ・ウィスキーやボルドー・ワインのまとめ買いという話もあまり聞かない。もしかしたら、一般の世論は意外と醒めた目で事態の推移を見ているのかもしれない。