ロンドンでは、停戦から本格的な和平条約まで、さまざまなシナリオが検討されている。しかし、いずれも米国の支援がある程度必要だ。たとえば、前線での戦闘が一時停止しただけでも、米国の衛星によるリアルタイム監視が必要になる。
フランスと英国の当局者は、ウクライナに展開する部隊を支援するために米国のミサイル防衛システム、空中給油や兵員輸送機などの後方支援も求めていると述べた。
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深刻な3つの問題
欧州(および若干の非欧州有志国)によるウクライナへの「再保証部隊」の派遣構想は、米国の関与がどれほど期待できるかがその成否の鍵を握っていることは間違いない。
米国が地上部隊を派遣しないことはすでに与件とされているであろうが、それでも情報協力、補給や輸送等の兵站面の協力、さらには防空システムその他の装備にかかる協力はどうしても必要である。
「情報協力」、特に、衛星や早期警戒管制機(AWACS)あるいはグローバルホークなどとのデータリンクは実際の戦闘において不可欠であり、これが得られなければ、ミサイル一つ発射することも困難になる。補給その他の兵站支援も欧州軍のみで完結させることは極めて難しい。
ただ、以下のように、本件構想が抱える深刻な問題はこれだけではない。しかもこれらは米国関与の不確実性と相俟って、互いに否定的な意味において関連しあっている。
第一の問題は部隊の性格と任務だ。本件構想は、基本的に北大西洋条約機構(NATO)加盟国(およびその他西側)の中の有志国によって成り立っている。それは当初からウクライナを支援してきた国々であり、ロシアから見れば「敵対勢力」であって中立ではあり得ない。
本件部隊がウクライナに派遣される場合は、中立的な停戦監視部隊ではなく、ウクライナの側に立って戦う「ウクライナ防衛隊」という性格とならざるを得ず、仮にロシアが攻撃を仕掛けてきた場合には、これと戦う覚悟ができていなければならない。参加国にとって、極めて重い判断を必要とする。
第二は、部隊の規模だ。これまでフロートしているアイデアは地上軍として「最大3万人規模」だが、ウクライナの最前線はおおよそ1000キロに及ぶ。そこに3万人ということは、単純計算すれば1キロ当たり30人、100メートル当たり3人しかいない。少なすぎることは明らかである。