部隊規模の問題は任務に跳ね返ってくる。少数しか出せないのであればそれに見合った任務とするしかない。
第三は、部隊派遣のタイミングだ。このような部隊の派遣は「停戦成立後」というのが一般的である。
本来的には「停戦」に至るためにこそロシアに対する軍事的圧力が必要であることを考えれば、「停戦後」の派遣でも遅いが、3月27日のマクロン演説ではさらに後退して、部隊の派遣は「平和条約」締結後、とされている。平和条約の締結は領土の確定という最も困難な問題の解決を必要とし、一般的には数カ月や半年で解決するものではない。
ウクライナの問題は欧州の問題
それでも本件構想が、ウクライナの防衛と欧州自身による防衛態勢の強化にとって一歩前進であることも間違いない。本件構想が多くの問題を抱えながらも具体化に向けて急速に議論が進展した背景には、ウクライナ戦争の帰趨が欧州の安全保障に与える深刻なリスクに対する認識と、トランプ政権の誕生によって突き動かされた、より自律的な欧州防衛態勢の構築の必要性に対する認識が、互いに関連し合いながら拡大してきたことがある。
3月4日にフォン・デア・ライエン欧州委員長が発表した8000億ユーロの「欧州再軍備計画」は、短期的には対ウクライナ支援を、そして長期的には欧州自身の防衛力強化を目的としていることを明らかにした。
ウクライナへの地上部隊派遣の問題は、欧州自身の防衛力強化の問題と連動している。欧州諸国の中には異なる理解をする国があるかもしれないが、恐らく米国の欧州安全保障に対するコミットの低下はすでに与件とみるべきであり、欧州による自律的な安全保障に向けた態勢整備は今後も続けられていくであろう。
ウクライナに対する軍事支援の持続性は、欧州によるこのような長期・構造的な動きの中で、紆余曲折を経ながらも維持されていくと思われる。