2025年4月20日(日)

「永田町政治」を考える

2025年4月11日

〝蔦重〟資料も公開されるコレクション

 脱線したが、「密談の隠れ家」国会図書館に話を戻す。

 国立国会図書館法によると、「国会議員の職務遂行に資するとともに、国民に対し図書館奉仕を提供する」が目的。国会議員の立法作業を補佐するための資料収集と研究などシンクタンクとしての性格も強い。

 東京・永田町の本館のほか、上野に国際子ども図書館、京都・精華町の学研都市に関西館が設けられている。書籍、新聞、レコードなど4700万点にものぼる膨大なコレクションのデジタル化が積極的に進められており、440万点が完了、このうち著作権法による保護期間が終了した65万点が個人のパソコンからもアクセスできる。

 筆者は以前、戦前の帝国議会における議事録(1937=昭和12年1月21日の衆院本会議)を閲覧したことがある。時の陸軍大臣・寺内寿一と政友会の論客・浜田国松の〝腹切り問答〟だ。 

 陸軍の横暴を追及した浜田が「議事録を調べて私が軍を侮辱した言葉があるなら割腹して謝する」と迫ったあの名演説は、簡単に見つかった。戦前のあの暗い時代の論争が目に浮かび、耳に聞こえてくるようで、圧倒された(当サイト2023年3月9日「高市氏VS小西氏『国会議員を辞職する』って簡単に言うな」参照)。

 これで驚いてはいけない。

 収集資料は江戸期以前にもさかのぼるという。今年の大河ドラマ「べらぼう」の主人公、蔦屋重三郎に関するデジタルコレクションもNDLギャラリー「時代の風雲児」としてネット上で公開されている。

 蔦重が出版、ドラマでの主要なテーマにもなっている「吉原細見」。安永5(1776)年に出版した「名華選」などがウェブ上で閲覧できる。カラーで、蔦重の肖像画もみることができ圧巻だ。

戯作に描かれた蔦重(NDLギャラリー「時代の風雲児・蔦屋重三郎」より)

 情報の宝庫であり、〝知の殿堂〟と言える場所なのだ。石破首相が〝不審な徘徊〟をする場所とするのは適切ではないだろう。

 素晴らしい財産を使わないのは実にもったいない。現実から離れ、居ながらにして、蔦重や江戸時代の浮世、近現代史など歴史の世界に引き込まれることもできる。それは、決して「のんき」な場所ではない。

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