それでもかなり「おつり」が出るはずだ。国際情勢の先行きが悪化していることを鑑み、防衛費に充てるべきという考えもあるだろうし、財政が厳しいから国債の減額に使うべきだという立場もあるだろう。重要なのは、180兆円という金額を包み隠さず議論の俎上に置き、何に使うかを議論し、国民的コンセンサスを得ていくことだ。
足元では「消費税廃止」「財務省解体」を主張する声もあるが、これでは何も解決しない。今夏に控える参議院議員選挙に向けては、バラマキ論争でも、財政再建を金科玉条の如く唱えることでもなく、2%経済へ確実に移行するために、虎の子のお金の効果的な活用方法について、タブーなき建設的な論戦が繰り広げられることを期待したい。
好循環の先にある社会で
企業経営に求められること
好循環のゴールは、賃金と物価がただ単純に上がることではない。賃金と物価が動くようになると、労働者はより高い賃金を得るためにスキルを身につけようと努力する。労働生産性の上がった企業や産業では賃上げができるようになり、それが魅力となって他企業や他産業で勤めていた労働者が引き寄せられ、雇用の流動化が進むだろう。企業は様々な冒険をして新しい商品を開発し、適正な価格で収益を上げることができるようになる。
健全な競争は、経済全体に活力をもたらし、生産性の向上やイノベーションの創出につながっていく。こうした社会をつくりあげることで日本は初めて、「普通の国の経済」のスタートラインに立てる。
今後はどの産業でもいい意味での競争社会が訪れるだろう。経営者は「金利のない世界」で続けていた前例踏襲の施策をやめ、競争社会で戦い抜く覚悟を持ち、そのために必要な人材を確保しなければ、生き残っていけないことを自覚する必要がある。(聞き手/構成・編集部 鈴木賢太郎)
