2025年12月5日(金)

都市vs地方 

2025年4月24日

 林野庁によると山林火災の直接の原因はたき火や火入れなど人間の不注意によるものが多いが、一方で、近年の気候変動により乾燥した時期が生じ、山林の手入れが行き届かず、地面に燃えやすい枯れ枝や枯れ葉などが積み重なって被害が拡大しやすい状況が生じている可能性も指摘されている。

 こうした状況は日本だけでなく、世界各地で生じている。例えばアメリカのカリフォルニア州では近年大規模な山林火災が頻発し、甚大な被害をもたらしてきた。今年もロサンゼルス近郊で大規模な山林火災が発生し、150㎢が焼失。建物が1万6200棟以上損壊し、29人が死亡、少なくとも14人が行方不明となった(時事通信、2025年2月1日)。

山林火災の近隣への影響

 このように山林火災が頻発したり、被害が拡大するようになれば、当然のこととして、山林に近い場所の土地利用に影響が及ぶ。山林火災が制御不能になる可能性が高ければ、その影響が及ぶ土地の利用価値は下がり、資産価値を大きく損なう懸念も生じる。

山林火災は世界各国で相次ぐ(Toa55/gettyimages)

 実際、アメリカのコロラド州立大学のルーミス教授は、1996年のコロラド州バッファロー・クリークで発生した火災が近隣の地価を大きく下げたことを示した。

 この大規模山林火災では48㎢が焼失し、付近の町の建物10棟が損壊した。分析の結果、火災によって森林火災から2マイル(約3.2㎞)の場所の住宅価格が15%下落したことが明らかになった。

 実際に被害を受けていない場所を分析したため、直接の被害により住宅価格が下落したのではなく、被害に遭う可能性が土地や住宅の価格に影響を及ぼしたと考えられる。山林火災への対策においては、その直接の被害を防ぐことはもちろん、近隣市街地の資産価値への影響も考慮する必要があることを示唆している。


新着記事

»もっと見る