2025年12月5日(金)

World Energy Watch

2025年4月25日

中国依存度が高まる風力設備市場

 中国の風力発電設備メーカー大手6社だけで世界シェアの3分の2近くを持つ(図-5)。中国メーカーが力を付けた背景には、国を挙げての洋上風力開発にある。

 風力発電累積導入量では中国は世界シェアの46%を持つ(図-6)。洋上風力に限定すれば51%だ(図-7)。

 大きな導入量を背景に、中国国内では多くのメーカーが育った。国内で太陽光パネルと電気自動車の大きな市場を作り、中国が世界の覇権を握ったのと同じ構造だ。

 日本国内で部品メーカーが育てば良いが、よほどの価格競争力を持たないとサプライチェーンに組み込まれることはないのではないか。

 そもそも、本当に日本で洋上風力事業が育つのだろうか。

日本の洋上風力に競争力はあるのか

 日本は欧米との比較では、風況に恵まれない。図‐8が世界の主要国での陸上風力発電のコスト推移を示している。

 トランプ大統領は、就任直後洋上風力発電の新設を禁止し、4月には工事に着工していたニューヨーク州沖のエンパイア洋上風力事業について、審査が十分でなかった可能性があるとして工事の中止を指示した。

 トランプ大統領は新設中止の理由として、もっとも発電コストが高い電源だからと指摘した。

 陸上風力の日本の発電コストは欧米を大きく上回っている。工事に手間がかかる洋上風力のコストは陸上よりもさらに高くなる。

 欧米との比較では風況に恵まれず、遠浅でもなく、着床式からコストが一段と高くなる浮体式にやがて移行する日本の洋上風力の発電コストは競争力を持つのだろうか。

 三菱商事が最初の事業を落札したのは21年だった。当時発電コストは下落を続けると想定されていた。まだ、中国も洋上風力設備では覇権を持たず、欧州企業が供給の中心だった。

 その前提で、政府は洋上風力に賭けたのではないか。将来発電コストが下がり欧米との差が縮まり、他の電源に対する競争力も生まれる、さらに設備でも欧米企業と組めば日本の勝機はある、と考えたのではないか。

 もはや、時代は変わった。洋上風力のコストはこれから下がるだろうが、かつて想定していたレベルに達することは最早ないだろう。

 中国の重要鉱物と設備供給での覇権は当面崩れない。ドイツの洋上風力事業に中国製が導入されるほどだ。

 想定は崩れた。過疎に悩む地域は洋上風力事業に期待しているのだろうが(「洋上風力と水素製造で地域創生」の幻想 雇用は生まれず、かさむ発電コストは消費者負担、水素の社会は儚い夢か)、導入が進めば、電気料金での消費者負担は増えるばかりだ。

 限られた資金をどのエネルギー事業に投入するのが賢明なのか。政府は立ち止まり考える時期だ。

 電気料金への補助金の投入が話題になるが、一方で温暖化対策とはいえ、消費者負担を大きく増やす事業を進めるのは辻褄が合っているのだろうか。

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