2025年12月6日(土)

山師の手帳~“いちびり”が日本を救う~

2025年4月26日

資源立国としての日本と喪失されたチャレンジ精神

 日本人は本来的に資源開発に向いた民族である。歴史を遡れば、佐渡金山は17世紀初頭、世界の金産出量の約5%を単独で担い、江戸時代初期には日本全体で世界の20%の金を産出し、銀においても、石見銀山は世界の流通銀の約10%を担い、日本全体では年間200トン、世界の3分の1を占める銀生産国であったとも言われる。

 これらの歴史的実績を見れば、日本人に資源開発の素質がないなどとは到底言えない。

 しかし、現代の資源企業にはその精神が失われている。評論家ばかりが跋扈し、実際にリスクを取り挑戦する者が減ってしまった。経済合理性を至上命題としすぎた結果、国家としての未来の投資を怠ったのではないか。高度な技術を持ち、勤勉で誠実な国民性を持つ我が国が、資源後進国と化すのはあまりにも惜しい。

 真に必要なのは、戦略と精神である。リスクを恐れず、未来への投資として資源開発に挑む。官民が一体となって、「採れる資源」から「使える資源」へと進化させていく覚悟が求められている。

尖閣列島における日米資源開発合弁という選択

 このような情勢を踏まえ、突飛な提案に聞こえるかもしれないが、私は尖閣列島に日米合同の深海資源開発基地を設立すべきと考える。米国との共同開発は、資源確保の実利に加え、対中国戦略としての政治的・軍事的メッセージともなる。満州鉄道の利権を当時アメリカに一部でも譲っていれば、太平洋戦争を回避できたかもしれないという歴史的教訓がここに蘇る。

 トランプ大統領が課す24%の関税をゼロにする代わりに、日米で深海資源を共同開発するディールを提案すべきである。これは単なる資源外交ではない。中国の脅威、ロシアの台頭、世界秩序の不確実性が増す中で、日本が主体的に未来を構想し、戦略的行動に出る契機となる。

 尖閣列島は我が国の領土でありながら、活用は限られてきた。その地政学的価値を再認識し、世界の鉱物戦略における一大拠点へと変貌させる時が来たのではないか。歴史に「もし」はないが、未来には無限の可能性がある。今こそ異次元の発想で国家の針路を切り拓くべきである。

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