緑の回廊の裏の役割
こうしてマイナーから一躍抜本改革のメインの政策に浮上した緑の回廊であった。現在では、北は知床半島から南は大隅半島まで24路線、総延長約2000キロメートル、総面積約60万ヘクタールが、図2のとおり設定されている。
これを見ると、やはり国有林の北日本への偏在が影響して、緑の回廊も北日本に多くが存在している。本来は、南西日本での充実が望まれるところであるが、民有林が多いことから設定は困難である。逆に言えば、この施策は国有林ならではの適性を十分に生かしたものであることがわかる。
ところで緑の回廊には裏の役割が2つある。1つは国有林の組織の事情、改革のたびに出てくる分割民営化対策である。筆者は、民営化には必ずしも反対ではないが、分割には危惧を覚える。
やはり国土の2割、全森林の3分の1の国有林を切り刻んだのでは、ただでさえも強い開発圧に苦しむ自然環境をさらに窮地に追い込むことになる。緑の回廊は分散的な国有林をつなぎとめ、環境材として最も重要である規模を維持するための命綱である。
もう1つは、これも地域ごとに分散した自然保護団体等の横のつながりを確保するための機能である。国有林、森林にとって林業関係者は重要な応援団であるが、自然保護関係者もまた同等の立場にある。全国規模での森林の保全を達成・維持していく上で、地域同士の連携が大きな力となる。
筆者は、林業が好きだ。危険で重労働で儲けが薄いというマイナーな業種であるが、自然力を活かしたものづくりであることにこよなく愛着を感じる。多様な自然には新しい技術を創造するための多くのヒントが隠されている。教条主義的な森林・林業政策から脱却して、真に国民のための森林・林業界とするには、まだまだ多くのことを自然から学ばねばならないのである。