ステークホルダー
トランプ関税の影響を受けるステークホルダー(利害関係者)は、各国の政府、自動車業界や自動車部品業界を含めた各業界、農家、米国の知事や上下両院の議員、消費者など幅広い。中でも、米国内の消費者は、今後、価格上昇と製品の選択肢の減少により、怒りや強い不満を抱くようになることが予想される。
英誌エコノミストと調査会社ユーガブの全国共同世論調査(2025年5月2~5日実施)によれば、「ドナルド・トランプが課した関税は、あなたが買う製品の価格を上げるか、下げるか」という質問に対して、70%(「大いに」と「多少」の合算)が「上げる」と回答した。一方、「下げる」はわずか5%(「大いに」と「多少」の合算)であった。
2024年の米大統領選挙でトランプに投票した有権者でさえ、同質問に67%が「上げる」と答えた。来秋に中間選挙を控えたトランプは、支持者を敵に回し、「MAGA離れ」を起こしたくないはずだ。
米消費者は日本にとって、強い味方になる可能性がある。そこで、日本政府はロビイストや広告会社と組み、同政府が全面に出ない形で、トランプ関税反対のテレビ広告やネット広告を打って、米消費者に訴える戦略をとる方法もある。
弱い立場のネゴシエーターはどのように交渉すべきか?
日米同盟、米国の経済力や市場の魅力などを考えれば、日本は弱い立場にあり、米国と比較して相対的交渉力が低いのは明らかだ。
では、弱い立場のネゴシエーターは、強い相手との交渉をどのように行うのが効果的か。フィッシャーとユーリーは、弱い立場のネゴシエーターには「交渉を決裂してもかまわない」「交渉を中止してもよい」という余裕と、「合意にこだわりすぎない」という意識が必要であると述べている。
上記の余裕と意識を持って、日本のネゴシエーターは、夏の参院選および自動車業界からの圧力などの国内事情や、今後、他国との合意を強調するトランプからの圧力に屈して、「合意」に至ることのないように留意すべきだ。「他国が合意したのだから、日本もこの辺で交渉を終了しよう」と、駆け込まないようにすることが極めて重要である。そして、もちろん、国内の発言については、米国がウオッチしているので、日本のネゴシエーターは、充分注意を払わなければならない。
