2025年5月13日(火)

トランプ2.0

2025年5月2日

 米メディアでは、トランプ関税を巡るトランプ政権内における強硬派ピーター・ナバロ大統領上級顧問(75、以下、初出以外敬称および官職名等略)と穏健派スコット・ベッセント財務長官(63)の対立が連日取り上げられている。このパワーゲームは、とりあえずベッセントに軍配が上がったようだ。ベッセントは、米国の報道番組に頻繁に出演して、相互関税をかけた国との交渉について各社のインタビューを受けている。

 今後、関税問題に関して、ナバロとベッセントの勢力争いに変化が生じることはあるのだろうか。どちらかが勢力を強めるかによって、日本に対する影響が変わってくるため、この点を注意深く見ていく必要がある。

 また、国民の人気に敏感なドナルド・トランプ大統領は、米国民の意見にどの程度、影響を受けるのか。これについては、各種世論調査をみてみよう。

 さらに、日本は最終的にトランプ政権からどのような要求を突き付けられる可能性があるのか。米国の黄金時代を引き寄せるために、トランプが仕掛けている関税については、他にも多くの問題点があるが、差し当たって、ここでは上記の3点に絞ってみる。まず、ナバロとベッセントの関係からみていくことにしよう。

(wildpixel/gettyimages)

トランプに忠誠心の高いのはナバロかベッセントか?

 米カリフォルニア大学アーバイン校名誉教授のナバロは、東部マサチューセッツ州出身で、関税に関してはタカ派の経済学者だ。第1次トランプ政権において、通商担当の大統領補佐官を務めた。第2次トランプ政権では、大統領上級顧問として相互関税を強く推進し、「相互関税の設計者」と言われ、対中強硬派として知られている。

 ナバロは、2021年1月6日の米連邦議会議事堂襲撃事件に関連した議会調査に協力しなかったため、「議会侮辱罪」で4カ月間服役し、24年7月に出所した。トランプは、ナバロが自分の犠牲になったと語り、彼の忠誠心を評価している

 一方、元ヘッジファンドマネジャーで、少なくとも5億2100万ドル(約750億円)の資産があると言われている超富裕層のベッセントは、バイデン前政権の運輸長官ピート・ブティジェッジ氏についで、2人目のLGBTQ(性的少数者)-カミングアウトしたーの長官である。ベッセントは、著名投資家ジョージ・ソロス氏の下で働き、2人はプロテジェ(助言を受ける人、いわゆる弟子)とメンター(助言者、いわゆる師)の関係にあったと言われる。

 ベッセントは、共和党が圧倒的に強い「赤い州」の1つである南部サウスカロライナ州出身であるが、2000年米大統領選挙においては、ニューヨークのイースト・ハンプトンの自宅で、民主党のアル・ゴア元大統領候補の資金集めのパーティーを開いた。また、その後の大統領選挙でもヒラリー・クリントン氏やバラク・オバマ氏にも献金を行った。

 さらに、ベッセントは共和党の故ジョン・マケイン氏にも献金した。ちなみに、トランプは、マケインがベトナム戦争で捕虜になったことを「恥」と決めつけ、マケインに「弱い人間」というレッテルを貼った。そのことから、2人が犬猿の仲になったことは有名だ。

 従って、トランプは忠誠心という面では、ベッセントよりもナバロを評価しているかもしれない。ただ、米メディアによると、ベッセントはトランプの弟ロバートと近い関係にあった。ロバートは兄ドナルドの熱烈な支持者であったので、この関係は、ベッセントにプラスに働いたとみることもできる。


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