2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年5月27日

 米側文書には、非関税障壁、デジタル貿易などその他の課題が列挙されているが、双方はこれらの問題および上記の合意の詳細を引き続き交渉し、正式な合意とすることが想定されている。また、英国のデジタル税制には米側が不満を述べており、米側文書に言及はないが、今後とも問題になり得るのであろう。

合意が世界に与えるインパクト

 スターマーは、今回の合意を「歴史的」と呼び歓迎の様子である。合意の中身が濃いとは言えないが、彼は一定の実利を得ることに価値を見出したに違いない。トランプの立場からは、英国との貿易収支は黒字であり(英国の自動車、鉄鋼などの輸出総額も小さい)、この程度の合意で満足するに足り、「画期的」と評価できたのかも知れない。

 問題は、そのグローバルな貿易体制に与えるインパクトである。この論説が指摘するように、英国が無視した「最恵国待遇」の原則、英国が容認した形となっている米国の一方的な10%の一律関税は、いずれもWTOルールに抵触すると考えられ、悪しき先例となる。

 WTOの貿易体制は既に揺らいでいるが、今後、中国、日本、EUの交渉結果が米国のWTOルール違反あるいは自らのWTOルール違反を見過すことになるのであれば、深刻な打撃を被ることとなろう。中国、日本、EUがどこまで頑張れるかが注目されざるを得まい。

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