シンガポールの南洋理工大教授ジョセフ・リオウが、4月10日付けワシントン・ポスト紙掲載の論説‘Trump sees trade as a form of tribute. That will only isolate the U.S.’で、トランプは世界の貿易経済構造を自分が中心の朝貢体制に作り替えようとしていると述べている。主要点は次の通り。

トランプが大々的に発表した「解放の日」の関税によって、彼が世界の貿易経済構造を自分が中心の米国の朝貢体制に作り替えようとしているのは明白だ。
15世紀の中国明朝の朝貢体制について述べた勅語の一節は、「我が王朝が興った時、その畏敬すべき徳は徐々に広まり、その名声と影響が及ぶところの誰もが朝廷に参じた」と述べる。トランプが世界をこれに似た壮大な構図で捉えていることは、最近の共和党下院委員会の晩餐会での次の発言からも分かる(トランプの言葉は遥かに下品だが)。
「今回は俺の好きなように関税をやる。……いろんな国が電話してきて、俺の尻を舐めてくる。マジで取引したくてたまらないんだ。……『何でもやります、閣下』と言って」
この朝貢体制は、かつて米国の外交政策を特徴づけていた価値観や地政学的優位性とはほとんど関係がなく、ましてや明朝の文化的洗練さは微塵もない。むしろ、極めて露骨なやり方で推進される急進的な重商主義に基づいている。
米国は、過去80年、不完全ながらも安定と繁栄をもたらす世界秩序を築くために、血と富を惜しまず費やしてきた。ケネディが就任演説で高らかに述べたように、米国には「如何なる代償も払い、如何なる重荷も背負う」覚悟があった。
そうした「自由主義的国際秩序」の時代は終わり、今や各国が米国の指導者や国民、経済の歓心を得るために朝貢(および贈り物)を捧げる体制に代わろうとしている。トランプにとり、関税は世界貿易のバランスを米国有利に是正し、何兆ドルもの資金を米国の国庫に集め、米国を再び製造大国にする手段である。
世界の多くの指導者が、免除や軽減、特別扱いを得るためにホワイトハウスに接触しているという。重要なのは、多くの国が対米投資拡大、対米関税引き下げ、米国製品の購入増といった「贈り物」を持参してトランプに接近していることだ。
トランプは「朝貢の行列」に満足しているだろうが、トランプは幾つかの大きな問題に直面するだろう。第一は、全ての国が朝貢を受け容れる訳ではないことだ。
中国は強く反発し、報復関税を引き上げ、両国関係は急激に悪化。中国の対応は驚きではない。習近平は強さを見せる必要があった。同様に、カナダも報復し、欧州もトランプ関税には報復するといっている。