2025年5月16日(金)

お花畑の農業論にモノ申す

2025年5月2日

 コメの値上がりが止まらない。コメの仲介会社クリスタルライスのまとめによると、秋田あきたこまちや関東あきたこまち、関東コシヒカリの取引価格は前年同期の2倍以上となっている。政府備蓄米が放出されても値下がりする気配が見られない。スーパーで販売される精米価格も同様で、農林水産省の発表では、最高値の更新を続けている。

(Hakase_/gettyimages)

 一向に値下がりしない米価へ消費者の不満もさらに募っており、農水大臣が謝罪する事態にまでなっている。なぜ、コメの価格は下がらないのか。歪な農政や産業構造を表出させている。

変わらないタイトな需給見通し

 コメの価格が下がらない原因は、需給のタイト感が薄れていないからだ。需給状況が最も簡単にわかるのは民間在庫のデータを見ることである。

 農水省の発表によると、今年2月の在庫数量は205万トンで、前年同月に比べ39万トン少ない。昨年は新米との入れ替わりが起きる端境期の7月から9月にかけてスーパーの店頭に並ぶ精米がなくなり急激に価格が上昇したが、今年の在庫は昨年よりも少ないのである。

 ただし、今年は政府備蓄米の売却や国のSBS(売買同時契約)と呼ばれる入札制度の枠で輸入された外国産米、関税支払いの外国産米の輸入という新たな供給量が加わる。需要量を昨年並みとみれば、6月末の民間在庫は増加するものと見込まれる。

 コメの需給分析に詳しい業者のシミュレーションでは、政府備蓄米が3回目から毎月10万トン売却され、外国産米の輸入量が6万トンになるとすると、今年6月末の民間在庫は158万4000トンになると見込まれ、昨年より5万トンほど多くなると予測している。しかし、米穀業界では6月末の適正在庫は180万トンとみており、タイトな状況から抜け出すとは言えない。市中価格が値下がりしないのもこうした需給見通しが反映しているためとみられる。


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