2024年12月7日(土)

【WEDGE創刊25周年特集】英知25人が示す「日本の針路」

2014年4月21日

「成熟した債権国」へと変貌を遂げる日本。将来の日本経済を見据え、政府・日銀に求められるものとは。

─アベノミクス第1の矢・大胆な金融緩和によって円高が是正されたのにもかかわらず、輸出が伸びていないことを疑問視する声があります。

浜田宏一 (はまだ・こういち)
米イェール大学名誉教授、内閣官房参与。1936年生まれ。経済学博士(イェール大学)。69年東京大学経済学部助教授、81年同教授。86年イェール大学経済学部教授。2012年12月、第2次安倍内閣で内閣官房参与就任。 (撮影・松村隆史)

 円高が続き日本の製造業の海外シフトが進んだため、円安が輸出増に効いていないと一般的に言われる。

 しかし、人間の一生にたとえると、ここ50~60年間の日本は、輸出を伸ばして海外に金融資産をため込みプラントも増やしてきた。いわば人間の壮年期として蓄えてきた。

 いまは、蓄積した資産を食いつぶしていく時期。貿易収支が縮小していくのは当然の流れであり、経常収支も然り。世界全体で見ても、世界各国の経常収支、貿易収支を足せば大体ゼロになる。日本だけが未来永劫黒字を維持しようとする必要はない。米国にしろ経常赤字をずっと続けながら、技術水準なり成長の活力を他国よりも保っている。

 日本の経済運営に関しても、これまでの円安政策による輸出振興で、輸出を伸ばし利益を他の資産に回して日本の企業や国民の消費を増やしてきたことから、経済運営が外需中心から内需中心に転換しつつある。1986年の「前川リポート」でも主張された内需主導型の経済成長への転換を果たしているのだ。「成熟した債権国」へと日本が変わってきているのであって、貿易収支が赤字でも、利子収入などで食べていけるので心配する状態ではない。

 それよりも心配すべきは、デフレギャップが解消し切れていないことである。有効求人倍率も1倍を超え、賃金も上昇して雇用市場には改善が見られるが、資本や設備に余剰感があり、投資意欲が伸び悩んでいる。


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