2025年12月8日(月)

新しい〝付加価値〟最前線

2025年6月2日

リビングファンとサーキュレーター 〜狭空間が進化を促す〜

 1990年頃、どこの家にもエアコンが付けられるようになって、再認識された家電がある。サーキュレーターだ。室内の空気を循環(サーキュレーション)させることにより空気を均一にすることが目的にしたものだ。

 日本人は身長が低い。このためか、あまり高く天井を高く作らない。基準になるのは、障子、襖の1.8メートル(6尺)に0.6メートル(2尺)足した2.4メートル(8尺)。未だに障子、襖が基準になる。ちなみに天井高さの上限はないが、下限は建築基準法で2.1メートルと決められている。

 加えて風通しがいい家が最上、とされてきた。日本の室内サーキュレーションは、風を一方から入れ一方から出す方法が基準。トラックの代わりに小舟で物資を届けていた江戸時代は、町内のどこかが堀。つまり天然のサーキュレーションが滞りなく行われ、風が吹いていたはずだ。

 私の住居は江戸時代、運河として作られた川から100メートル以内の距離に位置するが、3階なのでドアを開けるなど風の通り道を確保してやれば、風が入り、熱が室内に篭らない。夏でも30℃までなら、それなりに過ごせる。

 だが、今の考えは違う。室内は密閉が当たり前だ。その中でエアコンを使う。効率よく使うためには、窓からの放熱、壁からの放熱を防ぐ仕様にする。今の東京の新築住宅の密閉度は、北欧に匹敵する。

 そうなると新しい問題が出てくる。狭い土地に建てられる日本建築は、間取りが複雑になる。場合によっては、四角でない部屋も多い。つまりエアコンを付けても簡単に温度が均一にならない。そう言う時に使うのがサーキュレーターだ。風を送り込み、強制的に空気を循環させ、室内の均一化を図る。

古きよき時代のアメリカンデザイン シャークニンジャのサーキュレーター

 リビングファンは、身体に当てる風を作る。微風が喜ばれるのは、肌あたりがいいからだ。このため拡散し、身体全体に当たる様になっている。一方、サーキュレーターは、風を壁に当て、四方八方に散らし、循環を促す。要求される風質は全く異なる。

 しかし、令和の今は、扇風機は大きくは風を出す家電。リビングファンとサーキュレーターと分ける2台持ちではなく、融合できないか、となる。

 この時、リビングファンベースか、サーキュレーターベースかが問題になるが、日本の狭い住宅事情を考えると、サーキュレーターベースの方が都合がいい。リビングファンは、モーターにファンを直装着した形を取り、そしてそれをユーザーの真横の位置まで、支柱で高く上げる構造を取る。転ばない様に土台は、重いか、大きいかとなる。使っている最中はまだしも、収納などになると、無駄が多い。

 それに比べてサーキュレーターは小さい。遠くに押し出せば良いので、ファンも小さい。遠くまで届くので支柱は不要。その代わりに広範囲に首が振れる。狭い日本にドンピシャ。

 サーキュレーターをベースにハイブリット型を作るためにしたことは、モーターをACモーターからDCモーターへ変更し、そしてファンの角度をやや浅くすること。これが最低の改良だ。

 そうするとリビングファンの微風には及ばないが、まずまず微風と言ってもいい風になる。まさに必要は発明の母。蛇足ながら、一言付け加えて置くと、テレビで画質は余り問われない様に、扇風機も風質を論ずる声は少ない。むしろ扇風機は使い勝手が優先される傾向にある。


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