2025年12月5日(金)

古希バックパッカー海外放浪記

2025年6月1日

鮮明化する欧州や米国での反ユダヤの潮流

 ユダヤ人にとり現在進行形の脅威は、欧州や米国で拡大する自国第一主義の右翼勢力の台頭であると2人は不安を口にした。一昔前までは失業青年などの一部の不満分子が極右政党の支持者であったが、近年欧州では右翼ポピュリズムが民衆の広範な支持を集め政治的潮流が右傾化していると懸念を表明。

 そしてハンガリーのオルバン首相、イタリアのメローニ首相、フランスのルペン党首などの名前を挙げた。右翼ポピュリズムの主張は自国第一主義→移民排除→反ユダヤという連関があり欧州のユダヤ人は安閑としていられないと。

イスラエルの国民教育の目的は富国強兵

 イスラエルではユダヤ民族の受難の歴史は小学校から高校まで繰り返し教えられる。その総仕上げとして高校でのアウシュビッツなどの強制収容所見学があるという。

 ヘブライ語は古いユダヤ教の文献が読めるレベルまで学ぶが、同時に英語教育にも重点が置かれ小学校から英語力を鍛えられるようだ。英語が国際ビジネスや対外交渉で不可欠という国民の共通認識があるという。確かに2人は流暢な英語でユダヤ民族の歴史を滔々と語り、イスラエルの立場を筆者に対して論理的に説明した。筆者が知る限りイスラエル人は老若男女問わず英語レベルが欧州人の平均よりもかなり高い。

 さらにイスラエルでは理数系科目にカリキュラムの重点を置いているという。イスラエルはハイテク産業国家を目指しているが、同時に自国の軍需産業の高度化も進めている。高度な技術力が国防の基礎という理念である。日本では国防に関する産学共同研究はリベラルを標榜するアカデミズムによりご法度であること比べると雲泥の差である。

軍事的に無敵のイスラエルだけがユダヤ民族の“安住の地”

 2人は欧州や米国で右翼的ポピュリズムと反ユダヤの思潮が広がるなかで、在外ユダヤ人にはイスラエル以外に逃げ場がないと強調した。そしてイスラエルは国際社会から独立主権国家として承認を受けた唯一のユダヤ人国家であると定義した。

 イスラエルは海外から逃げてくる移住者とユダヤ人が、宗教上の理由で多産であることから将来も人口が増え続ける運命にある。1948年の建国以来、77年間イスラエルは戦い続けてきたが、イスラエルは今後も戦い続けなければならないのが国家の宿命とイスラエル国民は認識しているという。

 イスラエルがハマスやヒスボラという敵対勢力に対して圧倒的武力で無力化することがユダヤ民族の安寧と存続を保証する唯一の手段であると2人は何度も繰り返した。

 ユダヤ人が統治して圧倒的武力を保有するユダヤ人国家だけがユダヤ民族の安住の地となり得る。そのために戦い続けるのはイスラエル国民が共有している不退転の覚悟(unchangeable resolution)であると総括した。

北部パタゴニアのカンパナリオの丘からの絶景

以上 次回に続く

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