2025年7月16日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年6月3日

 同報告書は、中国が偽のオンライン・プロフィールや人工知能によって生成されたニュースキャスターを悪用して、「米国内および世界中で中国に対する批判的見解や批評家を抑圧し、米国の指導力等に疑念を植え付ける」工作を行っていると警告している。

 にもかかわらず、これまで海外の独裁者たちに真実を語るためにすべてを賭してきた勇敢なジャーナリストたちは、「報道の自由」を信条とする米国によって沈黙させられるかもしれない。だからこそ私たちはRFA存続のために闘い続け、法廷に訴えを起こしている。

 もしRFAが黙殺されれば、独裁者による公の物語は、チェックされることなく、異議を唱えられることもないだろう。これから先、勇敢な情報提供者から電話やメールがあったとき、その電話やメールを受け取る者は誰もいなくなってしまうだろう。 

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中国が恐れる7つの価値観

 ファング会長の指摘は非常に重要である。大国が崩壊するのは内部からの反乱であり、中国共産党はその点を熟知している。その観点から、中国が一番嫌うのは「和平演変」(平和的手段により、共産主義体制を崩壊させること)であり、そのための有益な一手段を米国が自ら放棄しようとしていることを、中国は心から歓迎している。

 中国が、ソビエト連邦崩壊からえた最大の教訓は、「崩壊の最大要因はゴルバチョフの『改革』と『情報公開』で統制が緩み、西欧的価値観が侵入したことが大きい」ということである。それゆえに、ネットの「ファイア・ウォール」を構築して欧米諸国からの情報を遮断し、思想面で「西洋的価値観」を入れさせないことを徹底している。「ファイア・ウォール」は年々強化されているが、RFAを遮断することは困難だった。 

 中国は次の7つの西欧的価値観を恐れている。すなわち、①立憲民主主義、②普遍的価値(人権、自由、③市民社会、④新自由主義(政府の関与を少なくするのが良いという考え)⑤報道の自由、⑥歴史的冷笑(文化大革命、天安門事件等を否定的にみる見方)、⑦社会主義に対する疑念の7点である。RFAはこれらの価値観を推進する重要な機関だった。


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