政府が随意契約で売り渡した備蓄米の店頭販売が5月末から始まった。5キロ2000円代と安い価格に、販売した店舗では行列ができ買えない人が続出するほどに。ただ、他に食べる物が色々ある日本では、安ければいいというものでもない。農林水産省は「おいしく食べられる」というが、本当だろうか。

「平成の米騒動」では4割が売れ残る
5月末に売り渡しが始まった備蓄米は2022年産(古古米)。テレビのニュース番組で買ったばかりの備蓄米を食べた消費者の声を紹介していたが、「普段のご飯と変わらない」とおおむね好評のようだ。
今後、収穫から3年以上が経過した21年産(古古古米)も出回るようだが、こちらはどうだろう。国民民主党の玉木雄一郎代表が「あと1年たったら動物の餌になる」と発言していたが、いくら安くてもおいしくなければ食べたくない人は多いのではないか。
実際、記録的な冷夏による不作でコメ不足となった「平成の米騒動(1993~94年)」では、緊急輸入したタイ米(インディカ米=長粒米)が「まずい」と不評で、最終的に輸入されたコメの約4割が売れ残ってしまった。
当時、「日本のコメを守るためにまずいタイ米を輸入しておいしいカリフォルニア米は輸入しなかった。これは農林水産省とJAの陰謀だ」などのうわさが飛び交っていたものだ。当時を知る農水省OBによると「平成の米騒動ではタイ産米の印象が強く記憶に残っているが、中国やアメリカ、オーストラリアからも輸入されていた。陰謀論は都市伝説でしょう」とのこと。
消費者を不安にさせた週刊誌報道
タイ米の印象が強いのは、当時世界最大のコメの輸出国であったタイが、一番早く日本への輸出体制が整い、真っ先に輸入されたためだ。ただ、売れ残ったのは、タイ米の味の問題というよりも、輸入検査でミイラ化したネズミの死骸が見つかったと写真週刊誌が報道、大きな消費者不安を招いたことによる可能性が高い。