2025年6月22日(日)

田部康喜のTV読本

2025年6月7日

被害者が加害者として追い詰められる

(出所)「あなたを奪ったその日から」関西テレビ放送 ホームページより

 紘美は、3歳から会っていない娘の顔を旭はわかるだろうか、とおそるおそるスマホの美海の写真を旭に手渡す。そこに、美海からの電話の着信名が。

 美海は、撮影目的の電車が通るのは1週間後だと駅員から聞いて、あわてて家に帰ろうとしてスマホをホームのベンチに置き忘れたのだった。とりに戻るときにその駅の近くで近道をしようと、暗い道に入り込んで無頼漢に肩を押されたはずみで手をついて、血が流れるほどのけがをした。

 さらに、あやしい中年に迫られていた。それを美海がまだ近くにいるだろうと考えた駅員が救ってくれたのだった。

 美海の声を聴いて、紘美は一瞬めまいがして後ろに倒れ込むような姿勢になった。旭がその両肩を支えた。

 翌日、紘美は、旭の友人で執行役員を務めている、望月耕輔(筒井道隆)がいきつけの店でひとり飲んでいるところにいって、頭を下げる。前日に旭について、エビの混入による事件が実の娘が犠牲者であることを伏せながらも、旭に対する不信の念を吐露したからだった。

 そこに、事件を追い続けている週刊誌記者の東砂羽(あずま・さわ、仁村紗和)が現れる。紘美の娘が亡くなったときの告別式の写真で、彼女を知っている記者である。

 サスペンスの魅力は、いつのまにか加害者に感情移入して事件が明るみにでないか、と鼓動がなるところにある。本作は、被害者が加害者となるという舞台設定の中で、観る者を揺さぶる傑作である。

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