他方、キャンペーンの弊害として、①将来の責任追及の対象にならないよう、政策決定権者が投資決定等を先送りする、②多数の官僚が退職し、中央・地方政府の行政効率が低下、③交通インフラや電力プロジェクト整備の遅れが指摘されてきた。これまでのところ弊害が大きく改善したとの声は聞かれない。
トランプ関税の弊害も懸念
行政組織改革は、中央省庁の再編から始め、3月初めに30省庁から22省庁への減少を実現した。地方に関しては、63省・直轄市を34省・直轄市に減らすことを、8月中旬までに実現すべく尽力している。トー・ラム書記長は、9月2日の独立宣言80周年で「新時代のスタート」を打ち上げたい意向と言われている。
改革の目的として、さらなる経済発展のために、投資許可など様々な手続きの簡素化、党と行政当局の二重ポスト整理等がうたわれている。この関連で、中央省庁および地方自治体の公務員・公的職員等約200万人のうち約20%が職を失うとの試算がある。また、新たな省庁・直轄市の人事の確定が来年まで持ち越されることもあり得るとして、地方行政の停滞を懸念する人もいる。
トランプ関税ついて、ベトナムは税率46%を提示されており、万が一、これが適用されると多国籍企業(特にサムスン等韓国企業)に壊滅的打撃を与えるだけでなく、ベトナム経済にとっても重要な成長要因を失うことになることから、政府をあげて対米交渉に臨んでいる。
このようにトー・ラム書記長が取り組んでいる改革は多岐にわたるが、この数カ月が正念場と思われる。ベトナムにとって、今年は独立80周年、南北統一50周年、米国との国交樹立30周年という記念すべき年であり、日本としてもベトナムの改革努力を出来る限り支援していくことが重要である。

