エネルギー価格上昇とインフレで生活を打撃
22年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻を受け、日本を含む主要先進国は、ロシアに対し制裁を課した。ロシアは侵攻前には世界最大の天然ガス、原油・石油製品輸出国であり、世界3位の石炭輸出国だったので、制裁により化石燃料の需給バランスは大きく崩れ、大幅な価格上昇を招いた。
欧州市場の天然ガス価格は、22年秋のピーク時にはコロナ禍時点の約10倍に急騰し、燃料用石炭価格も史上最高価格にまで上昇した(図-1)。欧州の電気料金、都市ガス料金は大きく引き上げられ、石炭火力が約3割の発電シェアを持つ日本でも電気料金が大きく上昇した。エネルギー価格は、商品の製造から輸送、販売までコストに大きな影響を与える。
主要7カ国の消費者物価は22年から大きな上昇を見せ(図-2)、その後は対前年比の上昇率は多少落ち着いたものの、物価は下がることなく推移している。需要が低迷している中国はインフレを経験していないが、その理由のひとつには、中国がロシアへの制裁に加わらず、ロシアから安価な化石燃料の輸入を続けていることがある。中国の電気料金、ガソリン価格はロシアの侵攻後も上昇していない。
苦しくなる国民生活
国民生活基礎調査では、児童がいる世帯の65%が「生活が苦しい」としている。この比率は22年調査から10%以上上昇している。生活に「大変ゆとりがある」は0.4%、「ややゆとりがある」は3.1%しかない(図-3)。
児童がいる世帯の22年年間の平均所得は、21年の785万円から812万円に3.5%上昇したが、実質的に収入減になるほど物価が上がった。
インフレに直面した主要国全てで生活が苦しいとする国民が増え、多くなったのかと言えば、そうでもないようだ。



