世界の主要国32カ国の世論調査では、家計にゆとりがあるとする人の比率がもっとも低く4%しかいない国が日本だ。市場調査会社イプソスは24年11月のレポートで家計の状況に関する調査結果を公表している。欧米とアジアのいくつかの国の回答を示した(図-4)。
物価上昇により、生活状況がコロナ禍前との比較で、どう変わったかの質問でも、かなり良くなったとの回答が日本は32カ国中最低の2%しかない(図-5)。
経済成長が続く途上国では、その恩恵を受け収入増により生活状況が良くなる人も多いが、日本では実質手取りが増えた人は少ないのだろう。
インフレの原因にもなったエネルギー価格、電気料金の引き下げ政策が必要だが、東京都の25年度の政策を見る限り、エネルギーコストに全く配慮はなく、コストの上昇につながる政策しかない。しかも、所得の高い人だけは補助金を利用できる格差拡大政策だ。
小池都政のエネルギー環境政策
東京都の25年度の一般会計の予算規模は9兆1580億円。ちょっとした国の予算に相当する。人口減少に苦しむ日本の中で、数少ない人口が増える都市が東京だ。20年と50年の人口比較では47都道府県の中で東京都のみ人口増が予想されている。税収も減ることはなく、潤沢な状態が続く。
小池百合子知事のエネルギー環境政策のキーワードは「脱炭素」だ。その主な内容は以下だ。
・世界のモデルとなる脱炭素都市として、再生可能エネルギー(再エネ)の基幹エネルギー化に向け、取り組みを加速化させる。
・新築住宅のゼロエミッション(排出ゼロ)を目指す。
・脱炭素化に関する技術を持つ都内企業の途上国での事業展開を支援し、経済成長と脱炭素化の両立を目指す。
消費者に関係する具体的な施策は東京都環境局のピックアップ情報に掲示されており、関連する補助金などについては、クール・ネット東京のホームページから確認できる。
最初に「気候危機とエネルギーの安定確保に向け電力を『へらす・つくる・ためる』をキーワードに節電や太陽光発電・蓄電池等の設置をよびかけています」とある。
エネルギーの安定確保とあるが、再エネ導入が増えれば電力の安定供給に支障が生じる可能性があるのは、最近のイベリア半島大停電で経験した(2040年、日本は大停電に見舞われる?スペインで起きた停電原因、再エネ電源の2つの弱点)。再エネが増えれば安定供給につながるほど単純ではない。太陽光パネルの95%は中国を中心とした輸入品だ。設置に携わる東京都の企業を除けば、その経済効果はほぼない。
対象とされる分野は、大きく次の6分野になっている。発電システム(太陽光・再エネ)、住宅、機器・設備、自動車、水素、支援(開発、運営、活動費等)。登場する補助金、助成金は、太陽光を中心に再エネ、電気自動車(EV)と水素導入に関するものばかりだ。
その結果、電気料金、エネルギーコストは上昇する。水素の政策にいたっては、機能するか疑わしい(【拝啓 小池知事、東京都の水素市場は税金と人材の無駄使いですよ】今、すべきは水素コストの削減)。


