2025年12月5日(金)

World Energy Watch

2025年6月16日

再エネは電気料金をどれだけ上昇させるのか

 地球温暖化問題に取り組む組めば、私たちが何も失うことがなく温暖化対策が叶うわけではない。温暖化対策には大きなコストが必要だ。

 たとえば、再エネ導入を支援するのは、固定価格買取制度に基づく私たちの電気料金だ。その今年度の賦課金額は1キロワット時当たり3.98円(図-6)。標準家庭で1年間に1万3000円から1万4000円支払っている。

 12年の制度開始以来、24年12月末までに消費者が支払った再エネ賦課金総額は32兆円を超えた。火力発電の燃料代を節約できたが、その額(回避可能費用)を差し引いても消費者の負担額は20兆円を超えただろう。

 東京都が太陽光パネル導入を新築住宅に義務付ける一方、設備導入に補助金を出し、再エネ設備を増やせば、私たちの負担額は増える。

 電気料金に直接影響を与える賦課金額以外にも、再エネの導入を進めれば必要な費用が膨らみ電気料金はさらに上昇する。

 天候次第の再エネ電源による発電を安定化させるため火力発電設備などの常時発電可能なバックアップ電源が必要になり、電気料金でこの費用を負担することになる。送電線整備の費用も必要だ。すべて電気料金に跳ね返る。

 電気料金は電気の消費者全員が負担するが、実は東京都の再エネ補助金により恩恵を受けられるのは限られた住民だけだ。

 補助金対象の太陽光発電設備あるいはEVの充電施設を設置可能なのは一戸建てに住む都民だ。東京都で一戸建の家を持つのは相対的に所得が高い人たちだ。

太陽光もEVも高所得者への補助制度ばかり

 住宅・土地統計調査によると、23年には東京都に724万世帯が住む住宅があり、内一戸建に190万世帯(26.3%)、共同住宅に518万世帯(71.6%)が居住している。持ち家は324万世帯だ。比率は44.7%である。

 一戸建ての比率は47都道府県中最低。持ち家比率は沖縄県の42.6%に次いで低い。そんな中で東京都が用意している補助金の大半は一戸建て所有者しか利用できない。

 少し古いデータしかないが、18年の東京都の所得別持ち家比率を見ると、所得と持ち家比率には見事な相関関係がある(図-7)。

 同じデータで東京都の世帯別所得を図‐8に示した。中央値は年収400万円から500万円だ。持ち家比率は5割に届かない。

 日本の温室効果ガスの世界に占める排出量のシェアは2.9%しかない。しかも省エネが進んだ日本社会の温室効果ガスの削減コストは、世界の中で相対的に高い。東京都が地球危機と言うならば、高所得者に補助金をばらまき削減効果がほとんどない上にコストが高い再エネ導入を進めるのではなく、日本政府が削減効果の高い途上国を援助し削減を進める方がよほど地球のためだ。

 東京都をはじめ多くの地方自治体が温室効果ガスの削減目標を国にならって掲げ、再エネ導入を進めているが、その費用対効果、社会に与えるマイナスの影響をよく考えるべきだ。僅かな削減と引き換えに、エネルギー価格上昇と電力供給の不安定化を招いている。

 自分の家庭であれば、効果があるかどうかも分からないものに、貴重な資金を投入しないのではないか。自己満足とアピールのために税金をばらまいていると言うのは、言い過ぎだろうか。

 児童を持つ世帯への助成など東京都がやるべきことは山積みだ。小池知事が「チルドレンファースト」と言うのであれば、24年の合計特殊出生率が全国最低の0.96の東京都が再エネ、水素、EVなどに税を使う余裕は、ないのではないか。

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