2024年7月27日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年4月30日

 太平洋に関する中国とのパワーシェアリングに同意することはオバマ大統領にとって(米国のどの大統領にとっても同じである)容易ではない。しかし、中国との交渉に反対する米国のタカ派達は、中国の増大する野心を阻止するには戦争か予防外交の何れかを選ぶ他ないことを認識すべきである。

 この第三の選択はリアリストの解決策である。最も重要なことは、今、これらの問題に取り組むほうが、米国にとって東シナ海における日中の武力衝突に直面し選択を迫られることよりましなことである、と述べています。

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 ホワイトは、従来とも対中宥和論者ですが、ここに極まれりとの感を抱かざるを得ません。万が一、現在の中国の政治指導者がいかなる合意に同意したとしても、将来の指導者がそれを尊重する保障はありません。現時点で不用意な譲歩をすれば、将来の中国の指導者にとっては、それが新たな要求の出発点になるだけとなるでしょう。

 ホワイトは、19世紀の欧州のコンサート・オブ・パワーに範をとっているようなことを言っていますが、善意に解釈しても、中国指導部の善意に期待しすぎる偏った理想論です。論説は、むしろ、「太平洋には米中の二大国を受け入れ得る大きさがある」とする、習近平の「新しい大国間関係」の代弁になっているという方が正確かもしれません。

 ホワイトの論は荒唐無稽というべきものですが、尖閣は米国がこれを守るために戦う価値が無い岩に過ぎない、という議論は、目にすることが少なくありません。アジア歴訪でヘーゲル国防長官が中国の防空識別圏を真正面から非難し、尖閣防衛に米国がコミットすることを改めて明言するなど、オバマ政権の対応も好ましい方向に向かいつつあるようですが、尖閣を守ることはアジア太平洋の現状と国際規範を守ることそのものである、ということを、日本としては、さらに広報していく必要があるでしょう。

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