2025年7月10日(木)

終わらない戦争・前編沖縄

2025年6月30日

 観光業依存をいかにして低減させるか──。これは、沖縄経済の長年の悩みの種だ。

観光業がけん引する形で沖縄経済は拡大基調が続くが、課題も多い(MAKOTO YAMAMOTO/AFLO)

 沖縄県は第二次産業である製造業が少なく、県内総生産に占める割合は、全国平均20.9%に対し、沖縄は4.3%だ(2021年度)。この要因には、島嶼経済特有の輸送コストの高さや市場規模が本土に比べて小さいことなどが挙げられる。

 また、観光などの第三次産業は労働集約的な性質があり、製造業に比べ生産性や付加価値は低くなりがちだ。県民所得は全国平均の約7割で、最下位が続いている。

 これらの背景には、〝沖縄特有〟の事情もある。日本復帰以降、沖縄県には本土との格差是正のための基盤整備を目標とした10年ごとの沖縄振興計画が策定され、近年では、毎年2500億~3500億円の沖縄振興予算が計上されている。

 国からの予算措置は沖縄経済にとって、有益な面もあったであろうが、それはやがて、所与の条件となり、国への依存度を高めてしまうという側面もある。仲井眞弘多県政下で副知事を務めた沖縄協会代表理事の上原良幸氏はこう指摘する。

 「県庁も地元メディアも、毎年いくらの振興予算を獲得するか(できたか)という『総額』の議論ばかりになりがちだ。予算とは本来、『何をしたいか』という中身について措置するものだが、県ではこれまで、そうした議論が乏しかった」

 また、幹部職員が「保守」と「革新」に二分されており、県知事が代わるたびに大幅に入れ替わるという構造的な問題もある。

 「職員交代頻度が多く、人的ネットワークが広がらず、サステナブルな県政が行いにくいとの課題があった。これからは〝本物の行政マン〟を育てていく必要がある」(同)

 そうした中、将来に向けた種も播かれ始めた。24年より、返還が予定される米軍基地の跡地と那覇空港との一体的開発を目指す「GW2050 PROJECTS」が経済界主導で構想されている。

 GW2050 PROJECTS推進協議会代表理事で、沖縄電力代表取締役社長の本永浩之氏は「次の成長を引き出すための重要な一手だと考えている。観光業に加え、しっかりとした産業を創出して、将来の沖縄、日本を引っ張っていけるような経済を目指したい」と意気込む。

 新種の中小企業も生み出されつつある。内閣府沖縄総合観光施策推進室長の星明彦氏は「沖縄ではポテンシャルを秘めた中小企業が雨後のタケノコのように育ち始めている。中小企業から高付加価値産業が生まれ、ボトムアップで日本の低生産性を打破するモデルにもなりうるのではないか」と指摘する。


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