その一つが電動アシスト自転車などの製造を行うJOeBテック(うるま市)だ。代表取締役の松原哲氏は「目の肥えた外国人富裕層にも『カッコいい』と喜んでもらえる自転車を作りたかった」と話す。
「沖縄から世界に向けて高品質のメイド・イン・ジャパン製品を生み出すこと」をミッションに22年12月に創業した同社は、スポーツ自転車向けの部品で世界トップシェアを誇るシマノと提携した他、フレームなどのコア素材には、高い強度と軽さから航空機にも使用されるUACJの「A7204アルミ合金」を採用している。その品質の高さから、3月には米国西海岸の企業に打診され、初めて海外向けに製品を出荷した。
かつて、中国で自転車工場を経営していた松原氏はこう力説する。
「日本はかつて〝自転車大国〟と呼ばれていたが、ここ30年間で、業界全体が安売り競争に走り、中国、台湾に市場を奪われた。だが、高品質のものづくりに対する日本人の姿勢は、他国に比べて独自の強みがある。日本はまだまだ世界で戦える」
沖縄を拠点に選んだ理由の一つは、若手人材が豊富であり、雇用創出にも貢献できると考えたからだ。現在、同社には高校卒業後に新卒で入社した約70人の社員が働いており、工場に足を踏み入れると、若手の技術者たちが多いことに気づく。
「県内には9校の工業高校があり人材は豊富だが、製造業が少なく、技術系の学生の受け皿が不十分であることはもったいない。沖縄県にはまだできることがあるはずだ」(同)
バニラビーンズが
沖縄の一大産業に?
高付加価値産業の芽も出始めている。障害者就労支援を行うソルファコミュニティ(中頭郡北中城村)は、17年よりバニラの栽培に取り組み、今年ようやく販売にこぎつけた。
きっかけは、15年に始まった洋菓子店クラブハリエとの共同プロジェクトだった。バニラビーンズはほぼ100%輸入であり、一時、1キロ・グラム15万円するほど高騰したが、国産品は「10本使っても、主要産地のマダガスカル産1本分の品質に勝てない」と言われる状態だった。
同社代表の玉城卓氏はマダガスカルやメキシコに赴き、栽培方法を研究した。現地でも暗黙知とされていた重要な発酵工程である「キュアリング」について、東京農業大学と共同研究を実施し、技術を確立。23年には特許を取得した。
バニラの栽培は苗を植えて収穫してからキュアリング加工を終えるまでに約4年半を要し、栽培工程も複雑だ。玉城氏は「人手を要し手間がかかる分、かえって福祉との連携につながった」と話す。
今年の出荷量は10キロ・グラムだが、来年には20~30キロ・グラム、将来的には2トンまで増やすことを目指している。県内の農家に栽培ノウハウを伝授し、面的に取り組みが広がれば、沖縄発の一大高付加価値産業にもなる。玉城氏は「バニラで儲けることが目的ではない。事業を拡大し、雇用の創出に貢献したい」と意気込む。
