トランプの「ディール(取引)力」低下
トランプは6月20日、イスラエルとイランの軍事衝突に関して「勝っている側に攻撃を止めさせるのはとても難しい」と述べ、イスラエルを説得するのは困難であるという見解を示した。この考えに従えば、ロシアとウクライナの戦争において、ロシアを説得して戦争を終結に導くのは容易ではないと言う意味になる。
トランプのディールは強者ではなく、弱者を説得させるやり方であることが分かる。これでは、ディールの達人とは到底言い難い。
トランプは、これまで「戦争をしない」と強調し、今年の大統領就任演説では「戦争に関与しない」と改めて断言した。米国は戦争に対して「無関与・無関係」であり、国内問題を最優先する「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」が、MAGAたちの心を捉えてきた。
トランプが全面に出したメッセージとは、「力による平和(Peace Through Strength)」であった。そもそもトランプの「力による平和」とは、米国の圧倒的な軍事力を背景に、戦争を始めたり、加担することではなく、相手にディールをもちかけてまとめるという手法であったはずだ。彼は軍事力行使をほのめかしておきながら、ディールで解決するという姿勢を示してきた。
しかし今回、イランとの核開発に関する交渉が難航し、ディールの現実が困難に直面すると、トランプは限定的ではあるが、軍事行動に出た。
強力な軍事力を背景に有利なディールをまとめるというディール中心の従来型から、限定的軍事介入を行い、その後ディールをするという「軍事介入ファースト、ディールセカンド」型を選択した。率直に言えば、それはトランプの「ディール力」の低下を現しているのだ。
今後、トランプはディールをまとめるために忍耐強く交渉を継続するのではなく、軍事力を行使してからディールを行うというスタイルも選択肢の中に入れるだろう。
その際、スミスのようなトランプ信者というよりもMAGA主義が強い支持者が、新しい選択肢を持ったトランプをどう判断するようになるのかに注目したい。
