2025年12月5日(金)

あの熱狂の果てに

2025年7月7日

 60年代後半から激化するベトナム戦争で、沖縄は米軍機が飛び立つ拠点となった。日本への復帰運動を反戦に熱心な左派が主導し、「軍事基地反対」がスローガンになったのも、彼らにとっては日本の内地が享受する「平和憲法」が、それだけ輝いて見えたからだ。

 護憲派の日本人ほど、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の押しつけだという批判をはね返すために、国民投票の実施を主導すべきだとする「憲法選び直し論」がある。

 しかし沖縄は、占領する米国の意向にむしろ反して、日本国憲法を「選んだ」数少ない土地なのだ。

 それを踏まえずに、日本と沖縄の関係を論じることは、とても虚しい。

冷戦が終わらない地域は
ウクライナ以上に沖縄

 憲法選び直し論を初めて唱えた、文芸評論家の加藤典洋の遺著に『9条入門』(創元社)がある。同書の描く新たな憲法観は、沖縄を考える上でも示唆が深い。

加藤典洋(1948〜2019)
我が身を省みず「捨身」で究極の平和理念を世界に先がけて実行する、という姿勢への熱狂は、護国の鬼となって「捨身」で敵への特攻を敢行するカミカゼ攻撃の自己犠牲への熱狂に通じます。じっくりと理性的に考えをめぐらすのではなく、光り輝く高貴なもののために身を挺して「捨身」で事に当たる、そのことへの讃美と陶酔の形が同じなのです。これは私たち日本国民につきまとう、最大の落とし穴といえるかもしれません(加藤典洋『9条入門』創元社)

※こちらの記事の全文は「終わらない戦争 沖縄が問うこの国のかたち戦後80年特別企画・前編」で見ることができます。

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Wedge 2025年7月号より
終わらない戦争 沖縄が問うこの国のかたち
終わらない戦争 沖縄が問うこの国のかたち

かつて、日本は米国、中国と二正面で事を構え、破滅の道へと突き進んだ。 世界では今もなお、「終わらない戦争」が続き、戦間期を彷彿とさせるような不穏な雰囲気や空気感が漂い始めている。あの日本の悲劇はなぜ起こったのか、平時から繰り返し検証し、その教訓を胸に刻み込む必要がある。 だが、多くの日本人は、初等中等教育で修学旅行での平和学習の経験はあっても、「近現代史」を体系的に学ぶ機会は限られている。 かのウィンストン・チャーチルは「過去をさかのぼればさかのぼるほど、遠くの未来が見えるものだ」(『チャーチル名言録』扶桑社、中西輝政監修・監訳)と述べたが、今こそ、現代の諸問題と地続きの「歴史」に学び、この国の未来のあり方を描くことが必要だ。 そこで、小誌では、今号より2号連続で戦後80年特別企画を特集する。前編では、戦後日本の歪みを一身に背負わされてきた「沖縄」をめぐる諸問題を取り上げる。


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