60年代後半から激化するベトナム戦争で、沖縄は米軍機が飛び立つ拠点となった。日本への復帰運動を反戦に熱心な左派が主導し、「軍事基地反対」がスローガンになったのも、彼らにとっては日本の内地が享受する「平和憲法」が、それだけ輝いて見えたからだ。
護憲派の日本人ほど、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の押しつけだという批判をはね返すために、国民投票の実施を主導すべきだとする「憲法選び直し論」がある。
しかし沖縄は、占領する米国の意向にむしろ反して、日本国憲法を「選んだ」数少ない土地なのだ。
それを踏まえずに、日本と沖縄の関係を論じることは、とても虚しい。
冷戦が終わらない地域は
ウクライナ以上に沖縄
憲法選び直し論を初めて唱えた、文芸評論家の加藤典洋の遺著に『9条入門』(創元社)がある。同書の描く新たな憲法観は、沖縄を考える上でも示唆が深い。
我が身を省みず「捨身」で究極の平和理念を世界に先がけて実行する、という姿勢への熱狂は、護国の鬼となって「捨身」で敵への特攻を敢行するカミカゼ攻撃の自己犠牲への熱狂に通じます。じっくりと理性的に考えをめぐらすのではなく、光り輝く高貴なもののために身を挺して「捨身」で事に当たる、そのことへの讃美と陶酔の形が同じなのです。これは私たち日本国民につきまとう、最大の落とし穴といえるかもしれません(加藤典洋『9条入門』創元社)
※こちらの記事の全文は「終わらない戦争 沖縄が問うこの国のかたち戦後80年特別企画・前編」で見ることができます。
