それでは、厚労省が説明をしたのはいつか。それは、「今後のスケジュール案」という資料から推測をすることができる(図表4)。
基準部会のスケジュールには「予定」の記載がなく、特別部会には「予定」とある。基準部会の開催日は確定・公表され、特別部会は確定していなかったと推測される。
基準部会の開催日が確定・公表されたのは13年1月7日、特別部会は同16日。すると、基準部会の開催が確定・公表された1月7日から、特別部会の日程が確定・公表される前の同15日の間と分かる。社会保障審議会特別部会で報告書をとりまとめるのは18日なので、この資料を用いて基準部会に説明をする時間的余裕はあったと考えられる。
舞台裏で何があったのか徹底検証を
本田氏に、今回の判決の受け止めについて聞いた。
「報道によって、デフレ調整だけでなく、ゆがみ調整もおかしいという話になっていきました。デフレ調整だけだった争点が2つになり、保護基準の算定基準の根拠は、全部がおかしいぞということになったのです。なぜこうした処理をしたのか。現在も国は明確な説明をしていません。
名古屋高裁で厚労省の担当者に証人尋問をしたときに、裁判官は『2分の1処理』について、『いつから検討を始めたのか』『どのような検討作業をしたのか』と質しました。これに対して、担当者は具体的な証言を拒否しています」
そのうえで、本田氏は、報道に対する国民の反応にも触れながら言葉を続けた。
「判決を報じるニュースのコメント欄をみると、『みんな苦しいのに』『裁判をやるくらいなら働け』といった声が目立ちます。今回の判決でしっかりと言わなければならないのは、合理的な論拠に基づいて政策を決めていかなければならない、ということです。
生活保護基準を絶対に引き下げてはならないというつもりはありません。しかし、国の裁量で何をしてもいいということになれば、『生存権』が絵に描いた餅になってしまいます。これに歯止めをかけたという点で、最高裁判決は高く評価できます。
今回は、特定の政党の政権公約に合わせる形で強引に数字を合わせるような状況証拠がたくさんある。何があったのか。しっかりと、検証をしなければなりません」

