理念があるから共に前を向ける
そんな時、橋本久美子社長が最初に着手したのは企業理念の再確認と社内共有だった。「私たちは何を包んでいるのか」「何のためにこの事業をしているのか」といった根本的な問いを社員と共に考える場を設け、理念を業務の隅々にまで浸透させていった。トップダウンの発信だけではなく、吉村では、「伝える」よりも「聴く」姿勢を重視し、社員一人ひとりが理念を自らの言葉で語れるようになるまで対話を重ねている。橋本社長も現場の声に耳を傾けながら、理念を押し付けるのではなく、「共に問い、共に考える」場をつくっている。
「完璧な答えを出すのではなく、問い続けることが理念浸透の鍵です」と橋本社長は語る。この姿勢こそが、理念を単なるスローガンから、現場で生きる「行動の指針」へと昇華させている。実際に営業活動や商品開発において、「それは想いを包んでいるか」「未来を創っているか」という理念に照らした問いが日常的に交わされているという。
社員の意思統一を図る上で最も重要なのは、経営者が社員とともに志を語ることである。理念を掲げ、対話を通じてその意味を共有し続けることにより、会社は単なる組織から目的を同じくする「チーム」へと進化する。
「理念とは未来からの呼びかけのようなもの。今、私たちが何をすべきかを教えてくれる」と橋本社長は言う。経営に迷いが生じた時、社員に不安が広がった時こそ、理念という旗を再び高く掲げ、社員とともに見上げたい。その旗の下に集まる想いこそが、組織を動かし、未来を切り拓く力となる。
高い希望と志を掲げよう
それが自他の善に通じ
幸福につながるからである
