ハリウッドの映画産業が今、“最悪の状況”ともいえる。もともと2020年3月のパンデミックで映画・TVの職業人口は全米で40万人から20万人へ半減、ハリウッド周辺(Greater LAエリア)で14万人強から9万人程度まで3割減の大リストラがあった。その後、ロックダウンの解除に刺激された急激な消費性向、期間中の助成金による可処分所得の増額なども手伝い、雇用者も急増し、23年初頭にはすっかり元通りになっていた。
だが、本当の危機はその後に起こる。23年5月「WGA(全米脚本家組合)/SAG-AFTRA(俳優組合)ストライキ」がはじまったのだ。
22年11月にリリースされたChatGPTによる急激な生成AIブームが進み、脚本や俳優の演技にAIが使われることへの拒絶感や、ストリーミングに対して脚本家・俳優への二次使用料が還元されていないといった不満が蓄積された結果だった。日本からすると過剰反応と思われがちだが、ハリウッド映画大手はこの生成AIという世紀の発明によって22年末から早速雇用者を急減させていた。
その対抗措置として、ストライキが起こった23年5月には、すでに雇用者切りが進み10万人を割り、7月ごろにはまたコロナ直後水準の9万人になってしまっていたのだ。この「資本家対労働者」の構図におけるストライキは脚本家で148日間、俳優で118日間続き、半年近くもの間、ハリウッド全体で映画が作れない状況に陥ることになる。

