映画市場における米中逆転
かたや中国では、25年公開の『ナタ 魔童の大暴れ(魔童鬧海)』が興行収入21億ドル(約3000億円)を突破した。世界の映画興行史において歴代5位、『アバター』(09年、29億ドル)、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19年、27億ドル)、『アバター2』(22年、23億ドル)、タイタニック(97年、22億ドル)に続く快挙であり、10億ドル以上のメガヒットになった歴代50作ほどは「すべてハリウッド作品」という米国が寡占する世界映画市場のなかで、「唯一の外国産メガヒット作」である。
25年1月29日(旧正月初日)にたった1日で3515万人が映画館に詰めかけ、興行収入18億元(約360億円)をあげたのは、米国も含めた映画史を塗り替える記録であろう(エンドゲームが初日で2.57億ドル)。日本最大興行収入である「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の日本国内での累計観客数を、初日で到達してしまうほどにサイズ感に違いがある。
米国も米国で回復傾向にはある。24年『インサイド・ヘッド2』はここ数年ずっと低迷していたDisney(ディズニー)の業績を上向かせる16.5億ドルの大ヒットとなり、『デッドプール&ウルヴァリン』や『モアナ2』など10億ドル級の作品はいくつも出てくるようになった。25年の実写版『リロ&スティッチ』も快調に5億ドル超えを実現してきている。
しかしながら、図でみれば一目瞭然だが、米国における映画興行市場はいまだ19年のピークから3分の2ほどを戻したまま。むしろ23から24年にかけて減ってきている事態もある。
映画館→配信へのシフトが急速化しているアメリカにおいて、その本流である「劇場」の市場はもはやコロナ前には戻らないかもしれない。ストライキによるヒット映画の公開減少、インフレによる下方圧力、消費者習慣の変化、そこにきてトランプ関税など業界全体にまん延するムードは決して楽観的になれるものではない。

