2025年12月5日(金)

Wedge REPORT

2025年7月16日

 がんなどの病気の患部画像を医師の目で直接的に診断できる、内視鏡の診断技術が進化している。この技術はブラジルやインドなど新興国にも普及し始めており、がんなどの早期治療につながる日本発の診断技術として注目されている。胃や大腸など消化器の内視鏡では世界シェア7割を誇る、業界トップのオリンパスの河野裕宣・消化器内視鏡ソリューション事業担当役員に内視鏡の現状と今後の展望について聞いた。

イメージ画像(オリンパス提供)

市場規模は3000億から4000億円

 日本消化器内視鏡学会のホームページによると、内視鏡検査とは、先端に小型カメラ (CCD) またはレンズを内蔵した太さ1センチ程の細長い管を口あるいは肛門より挿入し、食道、胃、十二指腸や大腸の内部を観察し、時には治療を行うもの。医療機器や技術の発達により応用範囲も広がり、診断から治療までスムーズに行われるようになってきている。

 同社調べによると、日本と米国、欧州(英国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン)と中国を含めた2024年7月時点での消化器内視鏡の年間市場規模は3000億~4000億円。成長率は25年から27年までは4~6%伸びると予想している。

 河野氏は新興国市場について「ブラジル、メキシコ、東南アジア、インドが伸びている。中国には1970年代から日本から医師が行って内視鏡の診断方法を教えたことで普及してきている。内視鏡の操作技術だけでなく、画像を見て病変を診断できる診断医師の目を養うことが肝心だ。

 いまでは病気の組織を内視鏡を使って取り除くこともできるので、早期治療にもつながる。新興国の医師を教育訓練することが重要で、こうすることで将来的には新興国への内視鏡手技の普及にもなる」と話す。「医療外交にもつながるので、日本の医療輸出にもなり2010年ごろから経済産業省などが力を入れて進めてきた。政府開発援助の資金を使って医療機器を新興国に提供することを長年やってきた」と振り返る。

 消化器内視鏡の2位は富士フイルムで、日本のメーカーが1、2位を占めている。このため、世界的に死亡原因の上位になっているがんの早期診断、治療につながる内視鏡の世界市場への普及が期待されている。

 胃を検査する内視鏡には、口から入れるのと鼻から入れる2つのタイプがある。比率的には口から入れる方が多い。どちらもほぼ同じ性能の検査ができるが、口から入れる方がカメラの画素数が多くより詳しく検査・治療ができるという。


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