AIの導入により診断技術が進歩
河野氏は、内視鏡技術の向上については、AI(人工知能)を使って2つの点で進歩しているという。「AIの機能をつけている『CADe』という内視鏡の機種は、がんかどうかの怪しい画像を、モニター画面でAIが指摘してくれる仕掛けになっているため、初心者の診断医には必要で、 診断の質を均てん化するのに頼りになる。
もう一つは、『CADx』という機種を使えば、これまではがんかどうか疑わしい画像を見つけた場合は、その表面組織を切り取って病理検査に回して結果が分かるまでに1、2週間ほどかかっていたが、これからは内視鏡で病変組織に近づいて拡大して診れば顕微鏡で見るのと変わらないほど精密な観察が期待できる」と指摘、AIを導入した新機種の開発も進めている。ただ、「大腸の『CADe』を使った診断は保険適用になっているが、胃では適用になっていない」と話し、これらの新機種の導入はまだ少なく、普及するのには少し時間が掛かりそうだ。
いまはハード面よりもソフトの進化スピードの方が速いという。「しかし、新しいソフト技術を認めてもらうためにレギュレトリー(
また診断の精度を上げるためには、「CADe」などに新機種がどれだけの診断データを蓄積して学習したかによるため、今後も多くのデータの蓄積がこれまで以上に求められている。
「内視鏡の進化の方向としては、病変部位の画像の見せ方のところで工夫をしてきている。腫瘍の組織の部分を強調して見せるとか、出血点がどこなのかを示して止血をやり易くするなど、画像精度の開発を担当医と一緒に開発してきた歴史がある」という。
「内視鏡のハード面の技術開発だけでなく、ソフト面でも担当医をサポートして労働時間の軽減につながるようなエコシステムを作ろうとしている。具体的には、データの作成、記録の作成などは、音声で話せば書面になるなど、医師は内視鏡の診断だけに集中できるような環境を目指したい」と話す。
「将来的に中国の内視鏡技術は脅威」
「国によって胃がんが多かったり、大腸がんが多かったりするが、かつては胃がんが多かった国がいまは大腸がんが多くなっている傾向がある。胃がんが多いのは日本を含めたアジア圏とロシアが多い」と国別の違いを指摘する。
中国での販売が低迷している理由については「景気が悪いことに加えて、習近平政権が腐敗撲滅を強化したため、病院が新しい機器を購入しなくなったため、売り上げが減少している。国産優遇政策により代わりに中国メーカーの内視鏡の購買推進が高まっている背景もある。将来的には中国の内視鏡技術の進歩は脅威ではあるが、現状では我々の方が上を行っている。一方で米国では昨年から最新型の内視鏡システムの販売を始めたのでその勢いがある」と説明する。
