「ノースウッド宣言」は、両国の核戦略は独立していることを前提としつつも、その運用において協調を図るものである。同宣言は、フランス大統領府と英国内閣府の主導で核政策、能力、運用全般にわたる調整を行う「核運営グループ」の設立を合意しており、実質的な連携が進む可能性がある。
インド太平洋への強化も注目
英仏の核戦力を合わせても、ロシアや米国には遥かに劣るが、核抑止力の面での協力は米国の核に頼るNATOの安全保障機能を補完する効果が期待できるであろう。また、ウクライナ停戦が実現する場合に備えて「保証」部隊を派遣する有志国連合構想も現実性が高まったと考えられる。
さらに、軍事能力強化のための産業協力や技術開発面での具体的分野や、情報・データ・通信・宇宙・サイバー等の面での協力、合同演習等の面での協力の細目も合意されており、実質的な成果をもたらすことが期待される。
日本にも関係があり得るものとして、今後の英仏のパートナーシップ強化の課題に海洋権益への脅威を防止するための「世界海洋安全保障対話」発足やインド太平洋地域における海洋安全保障を含む地域の強靭性の強化が含まれている点が注目される。
なお、2年後のフランス大統領選で、かつてはNATO離脱を主張し、依然としてNATOには懐疑的とみられる極右の国民連合が勝利を得れば、方針が変わる可能性もあり、フランス国内の受け止め方にも注目したい。

